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「3年前に契約すればよかった」久保建英が語るソシエダの“クオリティ”と新天地での生活。「とても感激した」出来事とは?


今夏にレアル・マドリーからレアル・ソシエダに移籍した久保建英に、地元紙『ノティシアス・デ・ギプスコア』が久保の独占インタビューを行なった。サッカーダイジェストWebでは、同紙の許可を得て、貴重なインタビューを掲載。最終回となる第5回では、ソシエダに加入しての印象や新天地での意気込みについて語っている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/9f7d95fe641543efab39adb3bcdaf31ecaf7b387

今夏に加入したソシエダの印象について語った久保


―レアル・マドリーか2年間のレンタル生活を経て、今夏、ソシエダに加入しました。ただ当初はファンの間であなたの移籍を巡り、チームの求めるレベルに達している選手かどうか懐疑的な見方もありました。

「SNSを見るのはあまり好きじゃないんだ。でも(マジョルカでの)1年目が僕のこれまでのベストシーズンということで、ファンが僕の加入に確信が持てないかもしれないとは思っていた。ソシエダが何年も前から僕に興味を持ってくれていたのは知っていた。でも僕は他の選択をした。だからファンが僕を歓迎してくれるか不安はあった。

でも幸い最初の試合で、自分が言うのもなんだけど、かなりいいプレーをした。もちろんチームが僕の良さを引き出してくれることも事実だ。このチームには、ボールをうまく操り、クオリティの高い選手のパフォーマンスを3倍高める土壌がある。ファンに満足してもらえるプレーを見せたいし、喜びを与えることができればと思っている」

―ファンのハートを掴んだという実感はありますか?

「今のところはそうだね。街角やレストラン、ズビエタからの帰り道……。ファンのサポートは常に感じている。もっともっとお返しをしなければいけないと思っている」

―では自分にとって最適な場所に収まったという実感はありますか?

「こんな優秀なチームメイトと一緒にプレーできるんだったら、3年前に契約すればよかったと思ってしまうよ。ただ良い形でシーズンをスタートしたからといって、どういう終わり方になるかは分からない。いずれにせよ、僕は今ここでとてもハッピーだ。それは胸を張って言える」

―システムは(中盤ダイヤモンド型の)4-4-2と4-3-3を併用しています。その両方のシステムで、あなた自身はどこでプレーするイメージを持っていますか?

「プレシーズンでは、トップで起用されたことはなかった。練習でもメディアプンタ(トップ下)やインサイドハーフとしてプレーすることのほうが多かった。僕はポリバレント性を発揮することが好きだ。だからミステル(イマノル・アルグアシル監督)がそうやっていろいろなところで試してくれるのは嬉しい。信頼の証でもあるしね。

4-4-2ではトップかインサイドハーフ、4-3-3ではインサイドハーフかサイドでプレーすることができる。4-3-3では、試合展開にもよるけど、前線の起点としてFW的な役割もこなしてみたい。ミステルは対戦相手に応じてシステムを使い分けたいと考えていると思うので、それに適応していきたい」

―改善できる点は?

「得点面だね。幸先よく1ゴールを決めたけど、今シーズンは得点面で進化を遂げなければならない。心がけているのはもっとボックス内に進入すること。それがミステルから要求されていることであり、チームにもたらしたいと考えていることでもある」

―20得点に絡みたいと目標を公言しました。

「ここまで1得点だ。アシストは自分次第で伸びる数字ではないので、ゴールを決めることにこだわりながら、自分の持ち味でもある質の高いパスを繰り出していきたい。20という数字を公言したのは、自分を追い込むためでもある」

―フリーキックを蹴りたい気持ちはありますか?

「僕はいつもそこにいるわけだからね。チームメイトと話し合わないといけないけど、ゴール右寄りの位置でFKのチャンスを得れば、志願するつもりだ」

―PKはミケル・メリーノよりもうまく蹴れそうだけど……。

「(パネンカを失敗したエルチェ戦のような)蹴り方をするのであれば、僕のほうが優秀だ。あの場面、一瞬フリーズしてしまった。まあミケルのほうがフリーズしていたけどね。でもすごかったのは、その後、挽回したことだ。ミケルがあんな蹴り方をするのは見たことがない。いつも鋭く強烈なシュートを蹴るので、あの場面も強いシュートをゴール正面に蹴ると思っていた。それがあんな風に蹴るんだから……」

―外から見たソシエダの印象は?

「ホームではほぼ無敵のチームに思えた。ファンの後押しを受けながら、得意のプレーをされると、揺さぶりをかけられ、じわじわと殺されていくような気分だった。実際チームの一員になると、クオリティも確かにすごいけど、その下地にはしっかりした準備があることが分かった。相手をよく分析し、その特徴に応じて、プランを変える。とても訓練されたチームだ」

―子供の頃にソシエダで印象に残っている選手は?

「カルロス・ベラだね。ライン間でボールを受けるのが上手い典型的なテクニシャンで、楽しそうにプレーするのがこちらにも伝わってきた。イースター期間中に開催されたトーナメント大会が終わった後に試合を観戦する機会があって、その時に生で彼のプレー見た。スキルに長けた選手だった」

―ホームの選手としてアノエタでプレーしてみた感想は?

「昨シーズンは怪我をしていたので、自宅観戦を強いられた。マジョルカが攻勢をかけていた中、カウンターを食らったと記憶している。スタジアムはとても良かったよ。新しく設置された照明の影響でちょっとフワフワするような感覚になったけどね。観戦に来ていた友人も『壮観だった』と話していた。

ただ、ホームよりもアウェーのカディス戦のほうが印象に残っている。ホームはスタジアムが満員になると聞いていたので、素晴らしい雰囲気になるのは頭の中でイメージができていた。一方で、アウェーではあんなに多くのファンと対面できるなんて思っていなかった。とても感激した」

―ソシエダのドレッシングルームは家族的な雰囲気で評判が良いですが、実際その中に入ってみてどうですか?

「すっかりグループの一員になれたと実感している。誰とでも気兼ねなくふざけ合える仲になった。マジョルカも家族的という点では同じで、そのおかげもありスムーズに馴染むことができた。マジョルカでも話しかけづらい選手は皆無だった。感謝している」

―ウェルカム動画がチームメイトの間でも好評だったそうです。

「新加入選手はプレゼンテーション動画を作成するのが恒例と言われて協力したんだけど、実際にしたのは僕だけなんだよね。他の新加入選手はひとりもしていない。なにかハメられた気分だ(笑)」

―長くソシエダでプレーするつもりですか?

「もちろん。5年契約を結んだけど、よほどひどいプレーをして追い出されない限りは、契約を満了するつもりだ」

―早くバスクダービーで本物の臨場感を味わいたいですか? バラカルドで行われたプレシーズンマッチで、ベンチに座っていた選手と口論になったというのは本当ですか?

「ユーリに押された時に何か言われたのかもしれないけど、むしろそうして熱くなってくれたほうが僕は歓迎だ。プレシーズンマッチはレフェリーの許容範囲が広がりがちなので、蹴りを入れられるケースも多くなる。公式戦ではまた違った展開になるはずだ」

―雰囲気がヒートアップしてくると、燃えるタイプ?

「その通り。ダービーでも、アノエタの後押しを受けながら観客と一体となってプレーしたい。僕にとって特別な経験になるはずだ」

―時々怒ってプレーしているように見えることもありますが……。

「僕はいつも自分のことをこう冗談で言っているんだ。スペイン人の悪いところと日本人の悪いところを受け継いで、混じり合った人間だってね」

―ドノスティアでの生活は幸せですか?

「このチームの一員であることをとても誇りに思っている。もちろんこの瞬間だけでなく、シーズンが終わった後も同じことを言えることを願っている。街については最高さ。言うことなしだ。人気スポットは全て車ですぐに行ける距離にあり、海があるし、食べ物もおいしい。今のところ中心街へは繰り出していない。静かに過ごしたいと思っているからね。釣りにもまだ行ったことがない。一度、(アレクサンデル)イサクと(マシュー)ライアン(現在は両者ともソシエダを退団)に誘われたんだけど、延期できない食事の約束があって同行することができなかった。後でマグロを釣っているところを見せてもらって、『まさか。そんなはずはない』って口にしてしまったよ」

―あなたが日本でビッグスターであることを知らない人も多いです。

「うまくやっているというか、付き合うことができている。もし誰にも何も説明することなく、サッカーに集中することができたら、それが一番だけどね。できればファンにはサッカーにだけ注目してもらいたい。ただ一方が原因となって他方の結果があることも事実だ。

日本まだサッカー強豪国ではない。だから欧州でプレーする選手が現れるたびに、その選手がクローズアップされる。例えばニュースでは、サッカーよりも野球が先に扱われる。最近はサッカーへの比重がだいぶ高まってきたと思うけどね。年配者の関心事は今も野球だ。時間の経過とともにこの流れが変わっていくことを期待している」


次戦、ソシエダはリーグ戦でヘタフェと対戦する。
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