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ブンデスからオファーも、斉藤光毅はなぜオランダ残留を選択?「一番の決め手は…」他人と比べず、自分自身にフォーカス


オランダ1年目のシーズンを終えた斉藤光毅。今オフにはドイツ・ブンデスリーガ1部のクラブからオファーが届き、次のステージに進むチャンスが巡ってきた。

残留するのか。移籍の道を選ぶのか。

来夏のパリ五輪でエースとして期待される斉藤は、スパルタ・ロッテルダムにもう1年残ることを決めた。ステップアップではなく、なぜ残留の道を選んだのだろうか。

前編はこちら→https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=135341
https://news.yahoo.co.jp/articles/8e1724cf959a87eb413b81d4ef900fcbfbe1f6c7

スパルタ2年目の目標は「二桁ゴールと二桁アシスト」


シーズン後半戦は二度の3試合連続ゴールをマークするなど、オランダリーグ挑戦1年目で目覚ましい活躍を見せた。コンディション不良で出遅れた前半戦の出来が悔やまれるが、斉藤は自分が活きる環境を構築して存在感を高めた。

「サイドバックの選手が上がってくるのが得意だったら、サイドハーフの自分が中に入る。内側を取るプレーが得意であれば、外側にポジションを取る。そのコミュニケーションがやっぱり大事なので、自分が活躍するためにチームとして機能する環境作りは大事だと感じさせられました」

仲間からの信頼を勝ち取ってボールも集まるようになり、得意のドリブルがより活きる状況が整った。シーズン終盤にかけて結果を残した斉藤の評価は、チーム内で増しただけではなく、他クラブの関心を引き寄せた。

「試合にも出られて、ゴールも取れました。(特に後半戦は)自分のプレーもできて、通用しているという自信が湧いてきた状況で、移籍の話をもらえたんです。ステップアップしたい。その想いが強くなった一方で、もう1年スパルタでプレーしたほうがいいと考える自分もいました」

ドイツ・ブンデスリーガ1部のクラブからオファーが届いた。シーズン終了後に熟考した斉藤は様々な想定をしながら、最善の答えを出すために自問自答を繰り返した。

「正解は分からないし、未来のことは分からない。どんな選択をしても、本当に自分次第。ステップアップしたとしても活躍しないと意味がないし、残ったとしても活躍しなければ意味がない。結局は全部、自分次第なんです」

心は揺れに揺れた。

「ドイツに行きたい気持ちもあったので、本当に自分でも意味が分からない状況でした。頭の中で何度も考えましたから。ドイツに行きたい、でも残ったほうがいいかもしれない。こうしたいけど、どうしようという状況が続いたんです」

斉藤は自分の未来を想像しながら葛藤を続けた。さらなる成長のために今、何をすべきなのか――。自分を冷静に見つめ直し、心に問いかけた。

「(周りの選手が続々とステップアップしている状況で)焦りがあったからこそ、その葛藤が生まれました。でも、焦りに身を任せて決断してはいけない。他人と比べてもいいことはないですし、他の人が良いクラブからオファーをもらっているから、自分もブンデスリーガのクラブに行ってステップアップしたい、という気持ちでは、あまり良い結果を生まないと思いました。

自分自身にフォーカスすべきで、自分自身がどういう性格で、どんなプレーヤーなのかをしっかり考えて決断したいですし、自分自身のサッカーキャリアなので、周りに左右されないようにしたいと思いました」

考え抜いた結果、斉藤は残留の道を選んだ。

「決断をするうえで一番の決め手は、チームに求められているかどうかです。シーズンの最初から試合に出て活躍したいですし、同じチームで2年間、活躍できれば、もっといろんな選択肢が増えてくると思います。自分自身も活躍ができれば自信が生まれる。これが一番良い選択だと思います」

残留を決めた以上、周囲の期待値は当然、高くなる。同時に相手からは今まで以上に警戒され、厳しいマークに遭う可能性は低くない。そうした状況下でも結果を残せれば、自信は深まり、さらなるステップアップはより確実になる。

厳しいプレッシャーに晒された時に、どんなプレーを見せられるのか。そのためには今まで以上にブレないメンタリティが必要になるが、斉藤は心を整えることはまだできていないと分析している。

「期待で焦りを感じてしまう自分がいるのであれば、自分で心をコントロールできる能力を身につけないといけません。これから活躍していけば、重圧や期待を背負わなければならないですが、その時に自分を保てるのか。そういう時に気持ちを持っていく方法は学びたいと思っています。だからこそ、スパルタでもう1年プレーすることは本当に良い経験になるし、自分の経験値として必要になると思います」

総合的な判断で残留を決めた斉藤は、新たなシーズンに向け、「二桁ゴールと二桁アシスト」を目標に掲げている。チームを躍進させたモーリス・スタイン監督が来季からアヤックスの指揮官に就任したため、首脳陣が刷新された。再び一から評価を築き上げる必要があるが、その数字をクリアできればA代表入りも近づく。だからこそ、斉藤は野心を隠さない。

「オランダリーグからA代表を目ざすのであれば、もっと得点とアシストが必要です。そのためには自分のパフォーマンスも、もっと上げていかないといけないですし、本当に満足せずに頑張らないと」

クラブで結果を残すと同時に、来夏のパリ五輪を目ざすU-22日本代表でのパフォーマンスもA代表入りに向けて重要になる。

「U-22日本代表にとっても、自分自身にとっても、オリンピックは本当に大事な大会です。そのためにも最終予選を兼ねた来年4月のU-23アジアカップは勝たなければいけないです。自分自身としても、チームとしても、本当に気合が入ります。勝たないといけないプレッシャーを常にみんな感じていると思うので、強い気持ちで挑まなければいけません。

そのためにも全員がヨーロッパで活躍することや、A代表を目ざしてプレーすれば、自ずと結果はついてくると思っています。目の前のことではなく、その先にある夢を全員が本気に掴みにいけば、より良いチームになると信じています」

だからこそ、斉藤はA代表に入りたいと強く願う。それは一度呼ばれるとかではなく、戦力として評価されてピッチに立つことを意味する。

「お試しで呼ばれるのではなく、A代表のレギュラー争いに食い込める選手になりたい」

新たなシーズンは間もなく幕を開ける。ライバルたちが結果を残そうと、周りから期待を懸けられても、やるべきことは変わらない。人は人で自分は自分。焦るつもりはない。

「自分が選んだ選択が正解だったと言えるようにしたいです」


“急がば回れ”。パリ五輪世代のエース候補は、A代表やステップアップを目ざしつつ、オランダの地で自分と戦い続ける。
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