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かつて香川真司も陥ったジレンマ。トップ下で機能した久保建英だが、右サイドならもっと輝ける?


[国際親善試合]日本 4-2 トルコ/9月12日/セゲカ・アレーナ

ワールドカップ4度制覇の強国ドイツを4-1で撃破して、中2日で迎えた12日のトルコ戦。大幅メンバー入れ替えを予告していた日本代表の森保一監督は、伊藤洋輝(シュツットガルト)を除く10人変更という大胆采配に踏み切った。

攻撃陣は、1トップに古橋亨梧(セルティック)、2列目は右から堂安律(フライブルク)、久保建英(レアル・ソシエダ)、中村敬斗(スタッド・ドゥ・ランス)というフレッシュな構成。久保のスタメンは想定内だったが、ポジションがトップ下というのは少し意外にも映った。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ea34d5f6d2ef1e7287ee045e7bf0f6f1375f0d2a

トルコ戦はトップ下で先発した久保。得点こそなかったが、抜群の存在感で攻撃をリードした


「今はチームで右のウイングで出ているので、僕のファーストチョイスというか、一番自分の力を発揮できるのは右だと思っています」と本人も前日に語っていたため、多くの報道陣が久保の右サイド起用をイメージしていたからだ。

ただ、森保監督としては、堂安と久保を共存させるためには、この立ち位置がベストという判断だったのだろう。東京五輪代表の頃から2人は臨機応変にポジションを入れ替えながら攻撃に違いを作っていたこともあり、そういった連係や工夫も期待したはずだ。

実際、久保は立ち上がりから攻守両面でかなり効いていた。守備の時は古橋とともに最前線から相手センターバックにプレスをかけに行き、攻撃時はやや右寄りの位置でプレー。素早い切り替えからゴールを窺う。

序盤こそ、ややトルコに主導権を握られかけたが、15分の伊藤敦樹(浦和)の先制点で日本は流れを掴み取る。このシーンでも久保が左に流れて田中碧(デュッセルドルフ)に展開。そこから毎熊晟矢(C大阪)、堂安、伊藤敦とつながり、最終的に豪快ミドル弾が生まれた。久保の神出鬼没な動きが、トルコ守備陣をかく乱したのは間違いない。

その後も古橋の決定機を演出し、28分には自身のミドルシュートから中村敬の2点目を演出する。

「球際でガシャガシャになってボール奪ったところで、タケとどっちが取るかとなって、そのタイミングで僕も打ちたかったけど、タケにこぼれた。あそこで振れば良いシュートが行くだろうと思って、打った瞬間から詰めていた」と中村敬は久保を信じて飛び込んだという。そうやって味方を活かす仕事に徹することができるのが、今の久保の余裕の表われと言えるだろう。

後半に入ってからも右からの鋭いクロスやペナルティエリア内での反転シュートなど数々の場面で違いを見せる。屈強なトルコ守備陣に身体を寄せられ、ボールを失うシーンも散見されたが、全体的には久保の攻撃センスが随所に発揮された4-2の勝利だったのではないか。

「やりたいことが全部できる試合はないと思いますけど、特にオーバーラップのところだったり、3人目を使ったり、ビルドアップのところも前半の途中からは上手くいくようになった。後半はちょっとペースが落ちたけど、いろんなことにトライできて良かった」と、本人も安堵感を吐露していた。

トルコという欧州の強国相手に、多彩な仕掛けやお膳立てができることを改めて証明した久保。自身の得点こそなかったが、アタッカーとして確かな進化も感じさせた。

その反面、本人が強くこだわる右サイドで出られないというジレンマを強く感じた試合でもあったのではないか。

ご存じの通り、日本の右には、この日もPKで勝負を決めたスピードスター伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)がいる。ドイツ戦ではスタートから出て縦横無尽に走り回り、相手守備陣をズタズタに引き裂いたし、トルコ戦も一瞬の飛び出しからPKをゲット。凄まじい推進力と破壊力を見せ続けているのだ。

指揮官にとってみれば、左の三笘薫(ブライトン)以上に重要なピースとなっているであろう伊東をスタメンから外すという選択肢はない。リーグレベルで言えば、フランスよりも格上のスペインで活躍する久保はもっと重用されていい人材なのだろうが、伊東の存在でどうしても序列が下がってしまうのだ。

伊東が好調を維持している間は「右サイドの2番手」という立ち位置が続きそうだし、トップ下においても鎌田大地(ラツィオ)という高い壁が君臨する。分厚い選手層を築ける日本代表にとってはプラスだが、彼らの牙城を崩さなければならない久保にしてみれば難題以外の何物でもない。

いろいろと思うところもあるだろうが、当面は「ソシエダで右、代表でトップ下」という異なるポジションを臨機応変にこなしていくことが肝要だ。アルベルト・ザッケローニ監督時代の香川真司(C大阪)も「クラブでセカンドトップ、代表で左」という変則的な役割を託され、代表に来るたびに苦しんでいた。両方で輝くのは極めて難しいテーマだが、久保はそこに挑んでいくしかないだろう。

「(今の代表は)いろんな人が点を取って、いろんな人がアシストして、いろんな人が攻撃に絡んで、前線もすごくレベルが上がっていると思います。あとは自チームでそれを続けられればいい」と目を輝かせた久保。熾烈なサバイバルを制し、真の代表エースに近づいていくためにも、まずはソシエダで高いパフォーマンスを維持することに集中してほしいものである。


次は10月のインターナショナルマッチウィークで活動が予定されており、同13日に『デンカビッグスワンスタジアム』でカナダ代表と、同17日に『ノエビアスタジアム神戸』でチュニジア代表と対戦する。
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