浦和がホームでアルヒラル(サウジアラビア)を1―0で下し、2戦合計2―1で2007年と17年大会に続く5大会ぶり史上最多3度目のアジア制覇を成し遂げた。後半4分にオウンゴールで奪った先制点を守り切り、19年決勝で惨敗した宿敵にリベンジ。日本勢の優勝は18年の鹿島に以来となる通算5度目となった。浦和は賞金400万ドル(約5億4000万円)を獲得し、23年度のACLはプレーオフから出場、12月にサウジアラビアで行われるクラブW杯にアジア代表として出場する。主将として浦和のACL制覇を支え、MVP(最優秀選手)を受賞したDF酒井宏樹(33)が、スポーツ報知に喜びの独占手記を寄せた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/0fcc5ad16aeb1882072a73b0f5ffcb837c1e92d6
移籍には誰1人、賛成する人はいなかったです。家族や知人が周囲から『なんで移籍してきたの?』と言われて、明確な答えを返せずに迷惑をかけたと思います。優勝することで『帰って来てよかったね』と言ってもらえるし、いろんな人に対して責任を取れる。移籍が成功だったと1つ証明できたという意味では、ホッとしています。
ACLはケガが多い大会だった【注1】けど、僕の中ではしっかり成果が出せたと思います。そこまで欠場した試合は多くない。ケガした状態で出てもチームのプラスになれると思ったら試合に出るようにしてきました。治しながらできるケガと、絶対に治さなきゃいけないケガ。そこの見極めはすごく細かくドクターや監督と話し合ってきました。
正直、ケガは多ければ多いほど責任を背負っている、全力でやってる証拠だと思います。草サッカーでプロ選手がケガしない。大きなプレッシャーがかかる状態で自分の筋肉に無理をさせて、限界値を突破させようとしているかだと思います。誰でも小さいケガは日々あるし、階段を下りるのもつらい時もあります。痛み止めの薬を飲んだり、それをどう隠してプレーするかがプロ。家族は心配してくれますけど、僕には自分の軸があるので、言っても意味ないなと思ってるでしょうね。
準決勝の全北戦もケガを抱えながら出て、延長後半に僕のスライディングからボールを奪って同点に追いつきました。正直、あまり覚えてないんです。試合により入れていて、クロスを上げてピッチに座り込んでホッとした気持ちしかなかったです。自分は決して強くない。厳しくしないと持ってるものが発揮されないタイプです。例えば(岩尾)憲さんみたいに練習から試合までずっと100%ではどうしてもできなくて、僕は試合でしか100%は出せない。常に自分にプレッシャーをかけています。
今年から初めて主将になりましたけど、すごく好きです。横浜M戦で開幕2連敗した後、ファン・サポーターがしっかりブーイングしてくれた上で、大きな『浦和コール』が入った。あれはすごく会話している感覚で、本当に主将ってやりがいがある。それが責任感になり、自分のパフォーマンスにつながっています。
チームには少しずつ変化や成長を感じてきました。去年7月のG大阪戦、0―1のハーフタイム。ロッカールームで『どんなに悪い状況でも90分間だけは死ぬ気でやろう』と伝えました。あの時はリカルド(ロドリゲス)監督という存在が非常に大きくて、彼の指示待ちみたいになってた。前半に悪い状況を誰も改善しようとしないことに違和感があったんです。
マルセイユなら、次の日の自分の生活がかかってるので、何が起きようといいプレーをして、チームが勝つためにがむしゃらにやる。その上で突破口が見えてきて、監督が微調整してチームで勝つ。G大阪戦の前半は『みんながこれでいいなら別にいいけど、俺は嫌だよ』と言いたかった。日本の選手はボールを扱う技術はうまいけど、プレッシャーやインテンシティーが上がった状態でうまさを出せるかがカギになる。そこだけを浦和の若い選手がやればもっと強いチーム、選手になれると思っていました。今の浦和は勝利への強い意志、ピッチ上で解決できる部分がすごく大きいです。
日本に帰ってきて2年。常にJリーグを学んでいます。新しい戦術を実行してる最中なので、まだまだこれからです。4月で33歳になったたけど、年齢はあまり考えたことない。DFなので、年齢を重ねれば重ねるほどプレーの幅が広がる。見ている方が衰えを感じたらその時なのかな。90分間ずっと走ってろと言われたらもうできないけど、その分、年々、走らなきゃいけないところ、走らなくていいところはより分かる。そこがうまく合わなくなったら引退なのかなと思います。
今後のキャリアは全く考えていないです。プレッシャーがかかる場所に身をおきたい。また欧州に挑戦するかもフラットです。僕は半年でシーズンを分けている。半年でどういうオファーが来て、今はどこにやりがいがあるか比べた上でいつも決断してます。この夏ですら先のことは分からない。奥さんには『また話変わってる』とか言われますけど、常に自分にとって一番いいと思う場所でプレーしたいです。(浦和DF)
【注1】酒井は昨年4月の1次リーグ・大邱(韓国)戦で右足第5中足骨を負傷し、手術を受けた。同8月のACL準々決勝・パトゥム戦で右ふくらはぎ肉離れを負いながらも、準決勝・全北戦で120分間プレーし、2得点に絡んだ。