そんな人々の話題の中心は、当然ながら、ソシエダに関するものだ。タケ・クボ(久保建英)はプレークオリティの高さと競争心を発揮することで加入してから数か月の間で、フットボール熱の高い街のファンのハートを鷲掴みにした。しかもそれは相思相愛の関係で、カタールW杯初戦のドイツ戦の前日、レアル・マドリーへの復帰の可能性について問われたタケは、「今僕はソシエダの選手だ。それ以外のことは考えていない」と一蹴した。
そのドイツ戦、タケはスタメンで出場。ポジションはソシエダでも経験している左サイドだったが、しかし勝手はだいぶ違っていた。
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ドイツ戦では前半45分のみプレーした久保
その時間帯になると日本は劣勢を強いられるようになり、33分にはイルカイ・ギュンドアンのPKで先制を許した。日本代表の監督(森保一)は軌道修正を図り、後半開始と同時にタケに代えてトミヤス(冨安健洋)を投入。タケのW杯デビュー戦は、不完全燃焼に終わった。
私見を挟ませてもらうと、決してタケのプレーが悪かったとは思えない。確かにいい形でボールをもらえず、得意のドリブルも不発に終わったが、そんな中でもラ・リーガで培ってきた守備力を披露。パスコースを巧みに消しながら、積極的かつ献身的にプレスを見せた。
いずれにせよ、こうした防戦一方の展開を強いられる中、前半のみで交代させられると、いい気をするはずがない。機嫌を損ねる選手も少なくない。しかしここ数か月間、そのプレーと振る舞いを見守ってきた我々はタケがそんな選手ではないことを知っている。それは、日本がゴールを決めるたびに、チームメイトの輪に加わって喜びを爆発させる姿が示していた。
試合後には、スラングを交えながら流暢なスペイン語で、「プレスがあまりハマっていないと判断して、僕に代わってトミ(冨安)を投入し、5バックにした。プランの1つとして用意していたもので、1点のリードを許していたので予定より早く見直すことになった。マジで上手くいった」と語った。
満足なプレーができない中でも、改めてタケは千両役者ぶりを見せた。こんなところも誰からも愛される所以だろう。プレーを見る限り、ヨーロッパリーグのオモニア戦で痛めた左肩の状態も良さそうだ。今後の巻き返しに期待したい。