3-1で快勝した10月29日のスタンダール戦、3バックの中央を任された渡辺は確かにDFリーダーだった。敵のロングボール、クロス、セットプレーをヘッドで跳ね返し、ハイラインの背後に生まれる広大なスペースも余裕を持ってカバーした。左右のCBジョーダン・トルナリガ、イスマエル・カンドゥスに声と身振りで細やかに指示を与え、苦しい時間帯にはチーム全体を鼓舞した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/67b2dc657f5fce994c94ae26b4e174a6b282c0cd
新天地ヘントでも守備陣の中軸を担う渡辺。日進月歩の成長を続けている
「ベルギーでは一瞬のスキで決められてしまう。日本よりレベルが高いし、決定的な仕事をする選手が多いなかで、ああいう一瞬の判断を間違えない。そこがいま、自分が試合に出られている要因のひとつかなと思います」
しかもタフ。渡辺は昨シーズン、フィールドプレーヤーとしてただひとり、リーグ戦34試合・3060分間フル出場した選手として名を馳せた。カップ戦2試合を含めると、36試合でプレーした。しかし、今シーズンの渡辺はシーズン前半戦というのに、すでに公式戦21試合(リーグ戦12試合、UEFAカンファレンスリーグ9試合)にフル出場し続けている。週一度のペースでプレーしていたコルトレイク時代と比べ、現在の渡辺は木曜日の国際試合を挟みながら、ハイレベルなプレーを持続している。
「木曜日・日曜日・木曜日・日曜日――のペースで21試合やりました。全部フル、出ています。もう替えられる雰囲気がないです。毎回、試合のたびに誰かが休まないとチームが回らないんですが、俺は『お前、疲れているか?』とか訊かれたこともない。いや、シーズン最初の試合が終わって、次の試合の時に『お前、疲れている?』って訊かれたんです。そこで『ぜんぜん大丈夫です』と答えてから、もう一回も訊かれずにずっとスタメンのままです」
カンファレンスリーグの予選ではポーランド、キプロスに遠征し、グループステージではウクライナ、イスラエル、アイスランドのチームと同組になった。
「そのときのキプロスは治安が良くなく危険で、外にも出られませんでした。今回、イスラエルでの試合はとりあえず延期になった。次(11月9日)はアイスランドにも行かないといけない。めちゃくちゃ寒いらしいですね。ポーランドにも行ったし(ポゴン・シュチェニン戦に加え、ウクライナのルハンシクとの代替開催を含む)、いろんなところに行きました。タフですね。カンファレンスリーグをアウェーでやって、中2日でベルギーリーグをやりながらフル出場し、それでも怪我なくやれているのは自分の強さのひとつだと思います」
ベルギーのサッカートークショー『エキストラ・タイム』で、往年の名プレーヤー、フランキー・ファン・デル・エルスト氏が「渡辺のヘント移籍は、この夏最高の移籍だった」と語ったほど、26歳のCBは充実の時を過ごしている。ワールドカップ予選はその国のサッカー界を挙げての総力戦。日本代表のラージグループに渡辺の名があるのは間違いない。
「(代表に)選ばれたいという気持ちは強い。選ぶのは代表スタッフ。自分ができることはまずチームで結果を出すこと。ヘントは上位にいる(リーグ戦3位)し、カンファレンスリーグもグループステージを突破できそう。そうなると強い相手と対戦できます。自分で結果を掴んで、それがアピールになれば、おのずと(代表選出という)結果がついてくると思います」
コルトレイクで“最後の局面で相手を止める”ことを武器とし、ヘントへの移籍を掴み取った渡辺は危機察知能力を研ぎ澄ませてベルギーリーグ屈指のCBになった。カンファレンスリーグのトーナメント戦、ベルギーリーグのプレーオフ1に進出すれば、さらにレベルの高い舞台で戦うことになり、彼の成長にブーストがかかる。このシナリオの過程で、2019年12月の対香港戦以来となる朗報が訪れてもおかしくはない。