遠藤航はなぜ“W杯優勝”を口にしたのか…キャプテンが語る目標設定の裏側 | footcalcio

遠藤航はなぜ“W杯優勝”を口にしたのか…キャプテンが語る目標設定の裏側

遠藤航
1
サッカー日本代表は11月15日と19日にFIFAワールドカップ26アジア最終予選の2試合を行う。7日にメンバー発表が行われたほか、試合の模様がDAZNで無料配信されるなど、盛り上がりは増すばかりだ。重要なアウェイゲーム2試合に先立ち、サッカー専門新聞『El GOLAZO(エル ゴラッソ)』では主将の遠藤航にインタビューを実施。11/8に号外として配布される紙面から、遠藤のインタビューをお届けする。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0c876ecd485051ee88c13f4823bc9b881415a1a6

森保ジャパンのキャプテンを務める遠藤航



―ここまでワールドカップ最終予選の4試合を終え、3勝1分の成績を残しています。現在の結果について、どのように捉えていますか?

良い結果だと思っています。確かにオーストラリア戦は引き分けに終わりましたが、簡単な試合ではありませんでしたし、前回の最終予選と比べても素晴らしいスタートが切れたと思っています。結果には概ね満足しています。

―10月シリーズのサウジアラビア戦とオーストラリア戦は重要な試合だったと思いますが、それに向けてどのようなことを考えていたのでしょうか?

特にアウェイでのサウジアラビア戦が難しい試合になることはわかっていました。そのため、理想を追求するというよりも、現実的な結果を確実に狙いに行った試合だったと感じています。もちろん、前半はアグレッシブに前線からプレッシャーをかけ、自分たちがボールを持った際にはしっかりボールを動かす意識を持っていました。しかし、特に後半に1-0で折り返した後は、どちらかと言えば、しっかりとブロックを引いて守りながらも、2点目を狙いに行くような戦い方をしました。

カタールW杯でも同様の戦い方をしましたが、W杯以降は、より主体的にサッカーをしていこうという話が出てきました。その中で、ドイツ戦のような親善試合で勝利を収めるという経験も積んできました。そうした状況を踏まえた上で、最終予選の重要な場面であらためてそこに立ち返り、全員が共通の意識を持って戦えたことは、個人的には大きな収穫だったと思っています。実際にW杯のときと同じ戦い方をしていても、個人的にまったく違う意味合いがあると感じています。

自分たちが“主体的なサッカー”を目指す理想がある中でも、状況に応じてしっかり守る選択をして2点目を取りに行くような戦い方ができたのは、チームにとって大きなオプションが増えた証だと思います。その点において、チームの成長を感じる瞬間でした。

―第2次森保ジャパンはW杯優勝を目標に掲げています。優勝を目標にしたからこそ、全員の意識が高まっていると感じますか?

その目標を決めたことは良かったと思います。キャプテン就任時にその目標を設定させてもらいましたが、今ではファンの皆さんやメディアの皆さんも含め、みんなの意識がその目標に向けて明確に一致しているのがとても大きいと感じています。

もともと日本代表はW杯に出場すること自体が目標であり、最終予選の厳しさを全員が感じながら戦ってきたと思います。しかし、今のフェーズでは、W杯出場は当たり前にしていかなければならない。その上で、W杯に出て「いい試合をする」ことにとどまらず、W杯で結果を残すために何をしなければいけないかということを常に考えるようになったと思います。この意識の違いが、結果的に最終予選で良い成績を残せている要因になっていると感じています。

―遠藤選手が目標としてW杯優勝を掲げた背景には、どのような思いがあったのでしょうか?

その目標設定にはかなり悩みましたし、キャプテン就任時にそれを口にすべきかどうかも考えました。ただ、“ベスト8”という目標にはしたくなかったんです。日本人には“ベスト16の壁”という意識が強くあるので、そこはあえて取り払ってしまったほうがいいなと。

W杯が終わってからは“ベスト4か優勝か”といったイメージを持っていましたが、周りの選手と話していく中で「やるなら優勝を目指したほうがいいだろう」という意見があり、最終的に優勝を目標に決めました。日本代表が最終的にW杯優勝を目標に掲げている以上、今からその目標に向かって取り組まなければ、2050年までに優勝を達成するのは難しいと思います。その点でも、キャプテン就任のタイミングでその目標を口にしたことには非常に大きな価値があったと思っています。

―強い覚悟を感じます。

正直なところ、今の選手たち、例えば東京五輪世代の選手たちの中には「なぜW杯優勝と言わないんだ」といったことを話す選手もいました。でも一方で、国内組で代表に入っている選手の中には、そこまでのイメージができていない選手もいました。そうした背景もあって、この目標設定にすごく悩んだんです。いきなり“優勝”と掲げても、そこに現実味がないと感じる選手たちがどう受け止めるか分からない、という迷いもありました。

でも、最終的に“優勝”という目標に決めたのは、まずは目線を上に合わせるべきだという思いがあったことに加えて、この目標は今の代表メンバーだけでなく、サッカーを見ている子どもたちにも伝えられるのではないかと思ったからです。

実際に、今の子どもたちは「日本代表はW杯優勝を目指しているんだ」という意識を自然に持っていると思います。自分の子どももそうですが、W杯で日本に優勝してほしいと純粋に言えているじゃないですか。そういう純粋な気持ちがすごく大事だなと。今の日本代表に対しても、ドイツやスペインに勝ったことで、すごく強いと思ってくれていると思います。そうした純粋でピュアな気持ちを持った子どもたちが将来代表になったとき、今はまだ「本当にできるの?」と半信半疑な大人たちもいるかもしれませんが、彼らが成長すれば、「W杯優勝を目指します」と純粋な気持ちで言えるようになるのではないかと。

もちろん僕が現役でプレーしている間にW杯で優勝できればいいですけど、もしそれがかなわなくても、純粋にそうした思いを持った人たちが、いつかその目標を達成するときが来ると信じていますし、そうした様々な思いを込めて、この発言をしました。

―アジアカップは悔しい結果に終わりました。代表を見ている人にとっては、その後の変化に注目が集まっていると思います。チームの中にいる選手としてどんな変化を感じていますか?

アジアカップ後のタイミングで言えば、やはりW杯優勝を目指すチームの中で、ポジティブに捉えると危機感が生まれたことです。もちろん、アジアカップでも優勝を目指していましたが、なかなか結果を出すことができませんでした。そこで、アジアでの戦いが決して簡単ではないということを、チーム全員が痛感しました。

また、これからのW杯予選に向けて、やはり「簡単じゃない」、「心してかからないといけない」という意識を再認識させられた大会だったと思います。そこが個人的には一番大きかったと感じています。

―アジアカップ以降、ポジション争いがさらに激しくなり、チーム全体のレベルアップを強く感じます。

そもそも、ヨーロッパで試合に出ていても日本代表に入るのが難しい状況になっていることを考えると、チームのレベルが非常に上がっていると感じますね。誰が出ても選手の特徴を生かしながら戦うことができますし、同じようなクオリティーで試合ができるのは大きなメリットだと思っています。

ただ、W杯で優勝するためには、これくらいの競争は最低限必要だと思います。もっと激しい競争の中で、もっとステップアップしていく選手たちが増えなければいけない。個人的にはまだ満足はしていないですけど、現状はいいチームになってきていると思っています。

―チームとして一歩ずつ段階を踏んでいる印象がありますが、W杯に向けてどのような成長を目指していますか?

よりディテールにこだわっていくフェーズになっているかなと思います。主体的なサッカーという話がありましたが、ある程度、その言葉はざっくりしていたと思うんです。より細部にこだわるフェーズに入ってきたと感じています。

“主体的なサッカー”という話をしましたが、その言葉が少し抽象的だった部分もあると思います。今は[3-4-3]のシステムで、アジアの対戦相手に対してできるだけ多くの人数を前線にかけて攻撃していますが、攻撃時のポジショニングや守備での前からのプレスのパターンなどを、より細かく整理していく必要があると感じています。

今までは、例えば「単純にセンターバックにプレスに行ったら、中を切りサイドをカットして行こう」という決まりがあったとしたら、それをさらに細かく、「こういう形でプレッシャーに行った場合、他のウィンガーは下がらず、ボランチが出る」とか、「もしバックパスされたらどう対応するか」といった細かなディテールについてもどんどん話し合っていくべきだと考えています。

システムや戦い方のパターンなど、チームのベースは整ってきたと思うんですよね。これからは、いくつかある戦術の引き出しをさらに細かく分けていくような作業が重要になってくると感じています。

―お話を伺っていると、日々クラブでプレーしている中で、代表チームに合流して数週間で連携を高めていくことの難しさを感じます。

もちろん、それが代表の難しさではあると思います。ただ、今はその中でも継続性が保たれていると思っているんです。それは監督が変わらずに指揮を続けていることが大きいです。もしW杯後に監督が交代し、新たな監督が就任していたら、一からチームを作り上げる時間が必要になっていた。森保監督が続投したことで、カタールW杯までに一緒に積み上げてきたものがすでにある状態なわけです。

継続性があるおかげで、短い期間の中でもより合わせやすくなっていると思いますし、メンバーも大きくが変わっていないので、やりやすさも感じています。ある程度、同じようなメンバーで戦い続けてこられていることはアドバンテージになっていると思いますね。逆に言えば、新たにその中に入り込むのが難しくなってるということだとも思います。

―11月にはアウェイでの連戦がありますが、DAZNでの無料配信が決定しており、多くのサポーターにご覧いただけると思います。最後に、応援してくださるサポーターの皆さんにメッセージをお願いします。

今の日本代表は本気でW杯優勝を目指しているチームです。シンプルに言えば、ぜひ多くの方に注目していただきたいと思っています。もちろんW杯に行けば多くの方が観てくださると思いますが、そこに至るまでの過程や、選手たちの成長を見られるのは、まさにこうした最終予選だからこそです。日本代表がこれからどのようなチームになっていくのか、ぜひ今から見守っていただき、期待を込めて応援していただけたらと思います。

アジア最終予選でグループCの首位を走る日本代表は、11月15日にインドネシア代表、同19日に中国代表と対戦する。
タイトルとURLをコピーしました