
自分から話しかける。チームの雰囲気に溶け込む。プライベートでも一緒の時間を過ごす。
そうすることで、自分の居場所を作り出し、それがプレーにもポジティブに反映されるというサイクルを求めていく。新加入となる自分から積極的に話しかけ、アクションを取って馴染もうとする動きはやはり大切だろう。
だからといって、コミュニケーションというのは、加入した立場の選手からしか向けられないものであるべきだろうか。受け入れてもらおうとする動きがあると同時に、受け入れようというチームサイドからの働きかけも非常に重要なはずだ。
移籍してきた選手がどれだけ溶け込もうと努力しても、チームサイドに排除しようとしたり、小馬鹿にするような雰囲気があったら、チームとして同じ方向を向いて戦うことなどできない。そして残念ながらそうしたチームは現実に存在する。
チームとして機能しているクラブは、そのあたりの空気感がやはりとてもいい。一例として今季もブンデスリーガで好パフォーマンスを披露しているフライブルクを挙げたい。
https://news.yahoo.co.jp/articles/090644a74e7666b18ceacdb11170dfca1a00d5f5
堂安「ナイスガイばっかり」 監督も太鼓判「チームに完全に溶け込んでいる」

新チーム加入直後は多かれ少なかれ自身のプレーをアピールしようという意識が強くなってしまうものだろう。攻撃的な選手ならなおさらだ。
得点、アシスト、そこへつながるプレーで周囲からの評価をグッと引き寄せたいと願う。
そうした意欲がなかったらそれこそ攻撃的な選手として致命的なことだが、だからと言ってその意欲が強くなりすぎて、エゴイスティックなプレーが増えてしまったらチームとして困ってしまう。
そうした点でフライブルクは自分のプレーを出そうという意欲的なプレーとチーム内で共有しているプレーイメージのバランスが上手く取れていると感じさせる。味方を生かすべきプレー、自身でチャレンジすべきプレーの判断基準が明確だ。
クリスティアン・シュトライヒ監督に、堂安のチーム内における受け止められ方について直接尋ねてみたことがある。シュトライヒは満足げに頷きながら、次のように語ってくれた。
「リツには非常に満足している。彼は成長プロセスの中にいる。多くのことを学んでいるし、やるべきことへ非常に興味を持って取り組んでいる。多くの質問をしてくるし、ビデオ分析にも精力的だ。非常にプロフェッショナルな姿勢を見せてくれている。チームに完全に溶け込んでいるし、彼自身もここを居心地良く感じている。選手は彼を温かく迎えて入れているし、彼はとてもオープンな人柄だ。たくさん話をするし、ディスカッションをする。彼のような選手、人間とともに仕事ができることは喜ばしいことだよ」
フライブルクではチームとしての関わりが非常に大事にされている。それぞれの選手がチームのために何ができるかを考えることを大切にする。だから新加入選手が来たらとても温かく向かい入れ、困ったことがあったら自然と助ける関係性が築かれる。
堂安もそうしたクラブの雰囲気の良さを感じている。
「移籍はかなり多いタイプなので、(移籍には)慣れています。特別なことはしてないですけど、(フライブルクは)すごくいい選手、ナイスガイのやつばっかりなので。コミュニケーションを取ってしっかりやっていきたいです」(堂安)
試合中も言葉にしながら、ジェスチャーを交え、コミュニケーションを頻繁に取っている様子が窺える。ボールが来なければ要求するし、ミスをしたら素直に謝る。そしてまたチームのために走り、戦う。そんな堂安だから、選手や指揮官だけではなく、ファンからの信頼もすぐに厚いものとなった。
