https://news.yahoo.co.jp/articles/78bd8dd72f32ce2c88f095d37533861b3be6931a
オーストリアで結果を残すLASKリンツFW中村敬斗
「もう2か月半ぐらい公式戦をやっていない(昨年11月14日以来)ので、めちゃくちゃモチベーションは上がっていますよ。この間はコンディション面で難しい部分はありましたけど、早くやりたいし(再開が)待ち遠しいですね」
オーストリアの強豪で左ウイングのレギュラーに定着し、前半戦では公式戦11ゴール6アシスト。リーグ戦でも8ゴール(リーグ4位)3アシスト(同13位)と、ここまで3位のチームをけん引してきた。データ会社・Comparisonaterによると、シュート数、攻撃アクション成功数、さらに攻撃インデックス(攻撃的な総合値)は同リーグ1位。今やリーグを代表するアタッカーの一人となった。
「前半戦で(各チームと)1度目の対戦を終えて、2度目の対戦となった時に、相手の対応はかなり変わりました。僕のところだけがっつりマンツーマン(マーク)になったり、ファウル気味にくる部分もあったり。それでもやれていたんですけど、そうなってからが次のステップなのかなと思いますね」
警戒される中でも、結果を出し続けることの重要性を感じながらW杯による中断期間へ。すると中村の元には、数々のオファーが舞い込んだ。G大阪からLASKに完全移籍した際の移籍金は約50万ユーロ(当時約6500万円)。現在は約400万ユーロ(約5億7000万円)まで上昇しているが、新たな才能を探す欧州クラブが次々と獲得に乗り出した。報道に挙がっただけで、オランダの名門・PSVやベルギー首位のヘンク、フランスのSランスやドイツのアウクスブルグ、イングランドのブライトンなど続々。直近では世界屈指のビッグクラブ・リバプールが調査、という記事も出た。しかし、中村が選んだのは残留だった。
「この冬にステップアップするべきか悩んだけど、残ることに決めました。LASKはすばらしいチームで、やりがいも感じています。今シーズンはオーストリアでしっかりと結果を残して、夏にステップアップするチャンスがあれば、と考えています。三笘薫さんのインタビューを読んだことがあるんです。18歳で(川崎ユースから)プロに上がれたのに、筑波大に進んで力をつけて、Jリーグで圧倒的な力を見せて、今プレミアリーグで活躍している。その方法が、すごく人生の参考になるような気がして。遠回りしているように見えても、焦らずに今いるところで力をつけて、自信を持って次のステップに行く、という考え方に共感した部分がありました」
17歳でG大阪と契約し、19年夏に19歳で初の海外移籍を果たした中村。すでにプロとしては5年以上、欧州でも3年半以上のキャリアを積んできた。次のステップが大きな分岐点になると考えているからこそ、オーストリアで地力を磨く決断をした。
「今、僕は22歳。ここでステップアップに失敗すれば、またキャリアをつくり直して、と考えると、5大リーグでプレーできる可能性は下がります。LASKはオーストリアの中でも、インテンシティー(強度)の高いチーム。前線からの守備や、球際の部分はすごく強調されるし、チームのキャプテンなどからも『点やアシストだけじゃないからな』と言われます。もちろんアタッカーは得点やアシストの数字が一番なんですけど、走って球際で戦って、という土台の部分は、ヨーロッパで活躍するためには絶対に大事だと思っているので。そこが今少しずつよくなってきているので、もっと磨いていきたいと思っています」
一方で、自身をさらなる成長へと駆り立てる親友の存在もある。ドイツ1部・シャルケでプレーするFW上月壮一郎(22)だ。京都からドイツ5部・デューレン、シャルケのセカンドチームを経て、今年1月にドイツ1部デビュー。2戦目のライプチヒ戦ではゴールも決めた。年代別代表で親交を深めてきた同級生の活躍に、大きな刺激を受けたという。
「G大阪にいたときは、(上月が)京都だったんで遊びに行ったりもしていたんです。ドイツに来てからも、よく電話していて。だから(上月の)ゴールは本当にうれしかった。ドイツ5部からトライアウトでシャルケのセカンドにいって、そこから結果を残してブンデスリーガですごいゴールを決めて。なんか一気に追い越された感があって、すごく刺激をもらっています」
オーストリアはドイツとサッカーのスタイルが近いと言われており、中村も理想のステップアップにドイツ・ブンデスリーガを挙げる。一足先にブンデスで得点した上月と、同じ舞台に立ちたい、という思いもある。
「僕自身はドイツに行きたい、という思いはあります。後半戦はあと公式戦で19試合残っているので、(前半戦の11点を超える)12点取れたらいいですよね。でも得点だけじゃなく、アシストも増やしたい。サイドからもクロスで、プレシーズンでもアシストが多いんですよ。10ゴール5アシスト、という数字もすごく評価につながると思う。日本ではザルツブルクくらいしか知られていないかもしれないけど、LASKはオーストリアのトップ4に入るクラブ。欧州は個人個人がステップアップへの意識が強くて、エゴが強い、というチームも多いんですけど、LASKはチームで戦っている、という感覚がある。もちろん個人として結果は出したいけど、エゴを押さえながら自分の結果にフォーカスしていきたい。チームの一員として成長していきたいという思いがありますね。それでいいオファーがきたら最高です」