「守り切れ!」「耐えろ!」菅原由勢、AZのアヤックス戦快勝劇で目の当たりにした“リーダーとしての凄み”

菅原由勢

1

AZは10月8日、敵地ヨハン・クライフアレーナで“アヤックスキラー”ぶりを発揮して2-1の勝利を収めた。これでAZは首位PSVと勝点2差の2位に浮上。一方、未曾有の不振にあえぐアヤックスは16位と低迷している。

立ち上がりから押し気味に試合を進めていたAZは前半アディショナルタイムにようやく先制点を奪った。殊勲のCFパブリディスがコーナーフラッグまで疾走すると、チームメイトが集まって喜びの輪ができた。しかし右SB菅原由勢はハーフウェイライン辺りから遠く仲間たちの姿を見守っていた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/37acc5280e914321292fe86626b1bc2f6454d3ae

敵地でアヤックス相手に快勝を収めて2位に浮上したAZ

2

「あのとき、僕はみんなが喜んでいるのを見て、相手のリアクションも見ていました。そして相手があの1点でガックリ来ているのも確認できた。そのなかで『後半の立ち上がりが重要だなぁ』というのを同時に考えていましたし、ハーフタイムでもそういう話をした。その後、後半の立ち上がりに2点目を取れました」

73分に1点を返したアヤックスは終盤、なりふり構わずパワープレーに出てAZ陣内にロングボールを放り込む。後半アディショナルタイム6分に得たCKではGKホルターも攻撃に上がってきた。このとき菅原は大声で何かを吼えていた。

「相手のキーパーが上がってきたから、守備の枚数がどうしても足りませんでした。僕はCKの守備では普段だとゾーンに立っていますが、そうではなくマークにつこうと見た。それと同時に、どこの枚数が足りていないかを聞いていました。そして『守り切れ! しっかり相手の選手を見つけてブロックしろ!』『ここは耐えるところだぞ!』ということをみんなに言っていました」

このピンチを凌いでからしばらくして、AZの勝利を告げるタイムアップの笛が鳴り、菅原は満面の笑みでGKライアンと抱き合った。

「勝たないといけない試合でした。そして勝てた。連戦でキツかったですけれどね。勝つためにやっていたので、勝てたことがすべてです。良かったです」

ドイツ、トルコを撃破した国際マッチウイークが明けてから、AZは22日間で7試合もこなした。カンファレンスリーグ(UECL)ではボスニア・ヘルツェゴヴィナに遠征し、本来ならセーフティーリードのはずの3点差を逆転されて3-4で負けた。その精神的ダメージは中2日のズウォーレ戦を3-0で勝つことで払拭し、この7連戦を5勝1分け1敗の好成績で駆け抜けた。

最近3週間で感じたのが、菅原のリーダーシップ。そして逞しさ、頼りがいだ。疲労は間違いなく蓄積されている。3日前、まるで熊のようだったヒゲはキレイに剃られており、本来ならスッキリした表情のはず。しかし疲労の色と、責任を背負って戦う男の凄みのせいで、しばらく私は彼がヒゲを剃ったことに気づかなかった。

「本当に頼もしくなった」と私は告げた。「もう5年も(AZに)いたらね」と言ってから菅原は続けた。

「パスカル・ヤンセン監督から『一番AZで試合出場数がある。そういう経験をチームに還元してほしい』と言われました。僕はオランダ人じゃない。他の国から来た選手ですが、これだけ信頼してくれている。だからやっぱり責任を持ってやらないといけません。ピッチ上だけでなく、言葉も使ってチームを盛り上げていかないといけません。監督の期待に応えられるようにやっていきたいです」

10月27日のアストン・ビラ戦(UECL)に出場すると菅原の欧州カップ戦出場試合数は47となり、AZクラブ歴代記録の単独トップに立つ。現役選手の公式戦出場数ではベテランCBマルティンス・インディやMFヨルディ・クラシ―が上回るが、“AZでの公式戦出場数”では菅原の170試合がナンバーワンだ。アシスタントコーチ時代から5年間の長きに渡り、ヤンセン監督は菅原のプレーと人間面での成長を見守ってきたからこそ、チームリーダーとしての信頼を寄せるのだろう。

AZに一人、攻撃陣の中に力を出し切れていない若手選手がいる。私は「書かない」という約束で彼のことを訊いたところ、菅原は誰に聞かれても誤解されないような言葉で真摯に答えてくれた。もちろん菅原に許可を得た上で書いているが、それも納得する内容のコメントだ。

「今は連戦中だからチームの戦術を落とし込む時間がない。そこで苦戦している選手もいますが、そこは僕たちがサポートしないといけません。僕の近くのロッカーの選手には『こうしたほうがいい。ああしたほうがいい』という話をいろいろしてコミュニケーションを取ってます。あとは彼がその後、どういう捉え方を自分なりにして、自身の良さを活かしながらチームにフィットしていくか――そこは彼自身がやっていかないといけません」(※選手が特定されそうな箇所は省略)

同じサイドのウインガー、ラフドには「フリー!」「使ってくれ!」と叫ぶものの、一向に菅原へパスは出てこない。それでも菅原は「気にせず走り続けることが僕の良さでもある。連戦でしたけれど、ある程度、走り続けることができた」とフリーランニングを続ける。そういえば彼はレギア・ワルシャワ戦後、こう言っていた。

「コンピューターを操作しているんじゃないんでね。10のことを言ってもひとつかふたつしかできないだろうから、徐々に試合をこなしながら『ああしてほしい。こうしてほしい』ということを話しています。徐々に良くなってきていると思いますね。若い選手にムラがあるのは間違いない。『良くないムラのとき』にどうサポートするかーーそれは僕自身に試されていることだと思います」

アヤックスに勝っていい気分で日本代表に合流できますねと、そう声をかけた。

「そうですね。負けると勝つのとでは違います。日本代表という立場でいられる喜びと覚悟、誇りを持って戦います。疲れたなんて言い訳にはならない。日本代表はサッカー選手としてこの上ない栄誉です。全身全霊を懸けて日本代表のために全精力を注ぎます」

日本は10月13日に新潟でカナダと、銅17日に神戸でチュニジアと親善試合を戦う。

コメント

  1. 名無し より:

    大人だなぁ

  2. 名無し より:

    菅原の良さはメンタルとサッカー脳だと思う
    本当に良い選手になった

  3. 名無し より:

    伊藤、菅原は今季終わったらステップアップせんとだぞ

  4. 名無し より:

    菅原いいよな。プレーもキャラも好き
    五輪からW杯まで代表では冷遇されたけど、ここから大事に使って欲しい

  5. 名無し より:

    もしかすると久保や三笘よりも疲労がたまっているかもしれない
    怪我はしないで欲しいね

  6. 名無し より:

    ワールドカップ前怪我したの残念だったけど、もしかしたらそれも成長の糧になったかもしれないな

  7. 名無し より:

    髭剃っちゃったかあ

  8. 名無し より:

    長友のようなメンタリティと内田のようなセンスを兼ね備えた存在

  9. 名無し より:

    えっどういうこと?23歳の菅原が出場数No1??
    AZにはバンディエラ的な選手がいないの?
    それともステップアップ的なチームなの?マジでよくわからん

タイトルとURLをコピーしました