欧州遠征での連勝は、日本代表の格好のプロパガンダになった。
欧州にも南米にも属さず、オセアニアを除けば最弱大陸のリーダーとして、日本は大きなハンディを背負っている。特に欧州勢が大陸内の公式戦でスケジュールを埋め、排他性を強めている現状では、アジアが主戦場の日本が質の高い親善試合を望むのは難しい。
今後もマッチメイクを優位に進めるためには、日本代表と戦う価値を高めていく必要があり、それには国内でいくら勝っても伝わり難い。
森保一監督にとってトルコ戦は、カタール・ワールドカップでのコスタリカ戦のリベンジを意味したはずだ。過密日程や温暖化等の状況を考えれば、固定メンバーでビッグトーナメントを勝ち抜くのは難しい。
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ドイツ戦に続き、トルコ戦も4得点で勝利を手にした森保ジャパン。日本代表の価値をまた一つ高めた
だが強運な指揮官は、1年後に見違えるほど進化した戦力を手にした。ドイツ戦から伊藤洋輝以外スタメン全員を入れ替えたチームは、最初の45分間で望外の結果を導き出す。
ドイツ戦と比べて日本の滑り出しが出色だったとは言えない。しかし肝心なゴールに関わる局面で効率性を発揮し、一気呵成に3点差をつけた。先制ゴールはトルコを自陣に釘付けにした後、人とボールが流動的に動くなかで生まれた。
デビュー戦の毎熊晟矢はインサイドにポジションを取り構築に加わると、堂安律が幅を取り、ボランチの伊藤敦樹がサイドへフォローに出て行く。代表経験値の浅いJリーガー2人がスムーズにポゼッションに参加して、最後は伊藤敦が会心のミドル。
その後、2点を追加したのも代表では新人の部類に入る中村敬斗で、毎熊はオヌル・ブルトのボールを奪い切り完璧なお膳立てをした。今年から加わった新戦力がレギュラー陣を突き上げ競争を煽る。それは理想的な構図と言えた。
一方でボールを持てば、目の前の相手がなんら障壁にならないかのように別格の創造性を見せたのが久保建英で、自らのビッグマウスの妥当性を証明した。また抜け目なく視野を保ち、ラストパスの質も備える久保との共演で、古橋享梧の生きる道も仄見えた。
ただし、さすがにドイツと戦った現主力組と比べてしまえば、戦術の徹底度や試合運びの成熟度では見劣りし、明らかに間延びをして過度にスペースを与えてしまった後半は、トルコの反撃を許してスタンドを盛り上げることになる。
結局、綻びかけたチームを修復したのはベテラン2枚のカードで、伊東純也が100メートル近い長駆でPKを奪い、遠藤航はコンパクトさとアグレッシブな守備を再度牽引して流れを引き戻した。
実は日本代表選手を欲しがるトルコのクラブは少なくないそうだが、現状ではオファーに快諾を得るのは至難の業だ。
こうして選手たちはステイタスを高め、日常の充実ぶりを増している。しかし日本代表がワールドカップ等の舞台で結果を出すには、同時に斬新な強化構想やロビー外交の後押しも不可欠になる。これからの1年間で、日本代表はシリア、北朝鮮、ミャンマーかマカオと計6試合を戦わなければならない。
そしてこうした試合の度に、わざわざ欧州で活躍する選手たちを招集するのは愚の骨頂だ。吉田麻也が吐露したように、常識外れの移動は選手たちを疲弊させ価値を落としてしまう。
日本代表は欧州にとっても無視できない力を蓄えている。だからこそアジア内での不釣り合いな相手との度重なる試合や無茶な長距離移動を回避するために、JFAも水面下で戦っていく必要がある。