2022年カタール・ワールドカップ(W杯)を経て、チームは1月21日のシャルケ戦からシーズン後半戦に突入。その試合で白星発進し、フライブルクとバイエルンにドロー。さらに2月4日のヘルタ・ベルリン戦に勝利と無敗でここまで来ている。
こうしたなか、迎えた2月7日のDFBポカール・ラウンド16のダルムシュタット戦。相手はドイツ2部で首位を走るチームで、昨年7月から公式戦で負けていない。しかもフランクフルトの近接地で、両クラブはダービーの関係にある。スタジアムには平日夜にもかかわらず、4万9500人の大観衆が集結。想像以上の凄まじい熱気に包まれた。
格上のフランクフルトは、前半の早い時間帯にフランス代表FWランダル・コロ・ミュアニが先制点をゲット。その後も主導権を握り、優位に試合を進めていた。
キャプテンのセバスティアン・ローデとダブルボランチを組んだ鎌田は、引いた位置でボールをさばくなどセーフティなプレーがメイン。それもオリバー・グラスナー監督の指示だったようだ。
その後、フランクフルトは守備陣のつなぎの部分でミスが出て、一時はカウンターから逆転を許してしまう。それでも前半終了間際にラファエル・ボレがゴールを決め、2-2で前半終了。試合の行方は後半へと持ち越された。
そこで非凡な決定力を発揮したのが鎌田だ。迎えた62分、右サイドの崩しからボレが上げたクロスをコロ・ミュアニが落とし、ペナルティアーク付近にいた鎌田へ。背番号15は迷うことなく右足を一閃。豪快にネットを揺らした。これが勝ち越し弾となり、フランクフルトは最終的に4-2で勝利。首尾よく8強入りを決めた。
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「ここ数試合は普段、自分がしないようなイージーミスがあった」
「後半戦が始まったシャルケとフライブルクの時は、練習の日に熱があって参加できなかったりしたので、実は体調が良くなかったんです。しかも、ブンデスはほかの国と違って、ワールドカップが終わってからの休みがすごく長かった。夏と同じかそれ以上に休んで、準備期間が夏の半分しかなかったんで、感覚的な部分を取り戻すのは少し時間がかかるだろうなと思っていました」と、本人は不安を抱えた状態でのリスタートだったと明かす。
グラスナー監督も前半戦のようなパフォーマンスができていないと感じたのか、この試合前に鎌田を呼んで話す機会を設けたという。
「『自分たちの6番のポジションはもともとそんなに前に上がる機会はない。ダイチも自分のやるべきことをやっていれば攻撃の結果はついてくる。今日はできるだけ後ろ目で状況を見ながら焦らずやってくれ』という感じの話がありましたね。
でも、すぐに結果がついてきて良かった。チームも良くなってきているし、CLもあるので、ここからさらに上げていきたいです」と、鎌田はさらにコンディションを引き上げ、決定的な仕事が数多くできる状態に持っていく構えだ。
今季、フランクフルトでの鎌田は、ご存じの通り、ボランチが主戦場となっている。ダルムシュタット戦でも卓越したテクニックを駆使したパス出しや展開で、見る者を大いに魅了した。
その反面で、球際や寄せ、ボール奪取という部分では見劣りする部分も少なくなかった。もちろんコンディションが完璧でない影響もあるのだろうが、もっとハードワークができ、ボールを刈り取れる選手になることが、当面の課題。それは確かだ。
「ここ数試合は普段、自分がしないようなイージーミスがあったりしたので、そういうのをなくして、前半戦のようなプレーができれば言うことなしだと思います。
でも、守備に関しては、今日のような相手だとロングボールの競り合いとか肉体的なところが多くなるので、逆に難しいですね。CLとか上位との戦いなら、お互いちゃんとしたサッカーをしてくるんで、もう少しインターセプトを狙いやすいし、組織的にハメに行ってもボールを取れるから。
ただ、こういう相手とも試合はあるので、競り合いの部分とかはもっともっと成長しないといけない。そのうえでコンスタントに試合に出続けられるようにしたいです」
本人もこう語っていたが、鎌田といえども球際やヘディングの競り合いなど、“バトルに勝つこと”によりフォーカスしていくべき時期に来ているのかもしれない。というのも、日本サッカー協会の反町康治技術委員長が「ボールを奪う、ボールを完全に刈り取るというのがサッカーの本質。日本でも再徹底しないといけない」と語気を強めていたからだ。
6番のポジションで世界トップを目ざそうと考えるのなら、非凡な攻撃センスとテクニックだけでは足りない。全てをマルチにこなせるように進化を続けていくしかないのだ。
さしあたって、21日にはCLのラウンド16でナポリと対戦する。そのハードルをクリアして、マンチェスター・シティやチェルシーといった強豪と対峙するチャンスを得られれば、鎌田はさらに一段階ステップアップできるはず。
そうなれば、自身の価値は一気に上がり、今夏の移籍市場でいよいよ欧州ビッグクラブ行きという長年の夢が叶うことになる。
あらゆる意味で非常に楽しみな逸材だけに、まずはしっかりと足もとを固めてほしい。地道な日々の積み重ねの先に大きな成功が待っているはずだ。