昨年末にクリスティアーノ・ロナウドがアル・ナスルに加入すると、6月に入るとカリム・ベンゼマとエヌゴロ・カンテがアル・イテハドと契約。リオネル・メッシ、ルカ・モドリッチ、ソン・フンミンなどには断れられたが、まだまだ巨額オファーをビッグネームたちに送り続け、今後もさらに有名選手たちの参入が予想されている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d3b1d6cebe0d0b96e430862b7cfcbadce8166c90
政府系ファンドによる4クラブ買収
欧州で「クリエーティブなオファー」とも言われるこうした高待遇の裏には、はたして何があるのか。最大のそれは、公的投資ファンドによるクラブ買収だ。
この6月5日、『パブリック・インベストメン・ファンド』(通称PIF)が、これまでスポーツ庁が管理していたアル・イテハド、アル・アハリ、アル・ナスル、アル・ヒラルの買収を発表。表向きは、「国家が打ち出したスポーツクラブ民営化プロジェクトの一環」とされているが、そもそもPIFは政府100%出資の国家ファンドであり、サッカークラブに国家予算が流れる新たな仕組みを過ぎない。
報道されるスター選手へのオファー元がアル・イテハド、アル・アハリ、アル・ナスル、アル・ヒラルばかりなこと、そしてカンテの獲得交渉時に「アル・イテハドの役員、そして『PIF』の関係者がロンドンに出向いた」というニュースが流れていた裏には、こんなカラクリがあったのだ。
この『PIF』は2021年10日にイングランドのニューカッスルも買収。そのニューカッスルが大型補強でチーム力を高め、2022-2023シーズンにプレミアリーグ4位に入って、20年ぶりのチャンピオンズリーグ出場権を得たことは記憶に新しい。
ちなみに、2016年に公布された国家変革プロジェクト「サウジ・ビジョン2030」では、スポーツ分野の発展もうたわれている。『PIF』の4クラブ買収をキッカケにいよいよ本格的に動き出し、最終的には競争力も売上高もサウジアラビア・リーグを世界トップ10のリーグにしようと目論んでいる。
さらに夢は、2023年ワールドカップの招致(エジプト、ギリシャとの3か国開催)だという。スター選手たちのオファーには、このワールドカップ招致のアンバサダー契約も含まれているとも囁かれている。
この手法は、カタールと似ている部分もある。独裁的で閉鎖的という国際的イメージの悪さをスポーツによって洗浄する、いわゆる「スポーツ・ウォッシング」だ。カタールがパリSG買収と昨年のワールドカップ開催で、国家的イメージアップを図ったのは周知の通りである。