鎌田大地「“他の選手と比べて”わかってなかった」激変した27歳“日本代表観”のホンネ | footcalcio

鎌田大地「“他の選手と比べて”わかってなかった」激変した27歳“日本代表観”のホンネ

鎌田大地

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鎌田大地(27)の連続インタビューシリーズ最終回。先日のセリエA王者ナポリとの試合で見事な決勝ゴールを決めた鎌田に、日本時間9月10日午前3時45分にキックオフされるドイツ代表とのリマッチを控える日本代表の現況について「NumberWeb」に余すことなく語ってもらった。

https://news.yahoo.co.jp/articles/3d01fcb74495b91e2a745735bc59f6e53fe0c2d5

“他の選手と比べて”自分はわかっていなかった

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鎌田大地は、たぶん、誤解されていた。

カタールW杯前までは、サッカー選手として当然のことを口にして、批判を招いたこともある。W杯にいたるまでの間には――童話「北風と太陽」に出てくる北風のように――記者が模範解答を求めることがしばしばあった。

「日本代表のために全力を尽くしたいです」というような答えを、だ。

そんな質問に対して、鎌田はこんな風に答えることが多かった。

「代表も大事ですけど、給料を支払ってくれているのはクラブなので、まずはクラブで全力を尽くしたいです」

記者が想定した答えを口にしなかったがゆえに、淡々とプレーするスタイルとも相まって「代表への想いのない、戦えない選手」だと受け止められることもあった。

しかし今年3月、代表合宿中に代表への決意を書くように求められた鎌田はこのように記した。

「チームの為に戦う」

自分のことばかり、クラブのことばかり考えていると以前までは受け止められることの多かった鎌田が、そんな目標を書くほどに“変わった”のは何故なのだろうか。

「あれは食事が終わったタイミングで書くように求められて、そこまで深く考えたわけではないんですよ。

でも、カタールW杯が終わってからですかね。『日本代表とはどういうところなのか』とか『国のために戦うというのはどういうことか』について、”他の選手と比べて“自分はわかっていなかったなと気づいたんです。今は『チームのために、何かできたらいいな』と思うようになりましたから」

“他の選手と比べて”というのが、キーワードだ。

鎌田はサッカー選手として自身のキャリアを、光と影でいうところの「影」を歩んで作られてきたものだと自覚している。そこで育まれた「雑草魂」は自らのパワーになる一方で、あるものが欠落していたという実感がある。

「リオ五輪の時もそうだったし、その前のアンダーの代表でもそうでしたけど、これまでは大事な大会で代表に呼んでもらえなかったりして……自分は代表との縁がなかったんですよ。だから、そういう気持ちの部分で、代表に対して強く思えていませんでした」

一部記者が求めてきたような模範解答を口にしたり、安易に話を合わせることをしなかったのは、鎌田が正直だからだった。

感銘を受けた“永嗣さん、佑都くんの涙”

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では、カタールW杯を境に、代表で戦う意義を自覚していったのは何故なのか。その理由ならば、今の鎌田は明確に答えられる。

「W杯を戦っている最中には、選手同士でよくミーティングをしましたけど、そこで(吉田)麻也くんだったり、(長友)佑都くんだったり、(川島)永嗣さんだったり、ベテランの人たちが、『W杯を戦うとはどういうことか』について、色々な形で、ことあるごとに話してくれていたからなんですよね。

特に永嗣さんは、語りながら泣いていましたから。それを聞いて、今度は佑都くんも涙を流したりして。そこで『W杯はこんなに懸けるものが大きい大会なんだ』と実感するようになりました」

ある意味では、日の丸を背負い続けてきたエリート選手たちとは違うからこそ、鎌田は先のW杯をもっとも意味のある大会に意識を変えられた選手だったのかもしれない。

「カタールW杯では(攻撃的なポジションの選手としては唯一)全ての試合で、先発で使ってもらっていましたけど、選手として国民のみなさんが期待してくれていたような数字に残る成績は残せなくて。すごく悔しい思いもしました。

だからこそ、この4年間は『国のためにもプレーしないといけない』という責任感が出てきたし、『自分にできることを日本のために還元できたらいいな』と思えるようになったんです」

ただ、だからといって性格を曲げたり、スタイルを変えようとは思わない。「はっきり変わったのは、僕のなかの感覚的な部分」だと自覚している鎌田は、これからの展望についてこう考えている。

「自分は言葉や行動で、みんなを引っ張れるようなタイプではないです。だからこそ、サッカーの実力をつけたり、絶対的な成績を残したりすることでみんなから認めてもらえるような選手にならないといけないと思っています」

だからこそ、この夏には新天地としてラツィオを選ぶにあたって、こう誓った。

「僕のようなポジション(*攻守両面での貢献を求められるインサイドハーフ)の選手は、やはり全てをハイレベルでできないとダメだと思うし。実際、世界の良いチームでやっている選手を見たら、このポジションには、そういうことができる選手がいっぱいいるので。CLに出場して、リーグでもタイトル争いをできるようなチームで戦っていくことが、選手としてもっとも大きくなれると考えています」

律がそうだし、建英もそう。薫とかも…ただ自分も

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もっとも、ラツィオでは開幕から苦しい時間が続いた。

イングランドからは三笘薫、スペインからは久保建英の目覚ましい活躍が聞こえてくる一方で、鎌田のいるラツィオは開幕から格下に2連敗を喫する不穏な立ち上がりだったからだ。

それでも日本代表合流前の最後の試合、イタリア王者ナポリとの試合でスーパーゴールを決めて、チームを勝利に導いた。自分は自分で、他人は他人だとわかっていながらも、鎌田は代表のチームメイトの活躍をもモチベーションに変えている。

「今の代表は競争力もすごく高いし、何より、ギラギラしている選手がすごく多いので。わかりやすく言うと(堂安)律がそうだし、建英もそう。薫とかも、すごく自信をもってやっているでしょうし。前線の選手はやはり、みんな、口には出さないですけど、『俺が一番だ! 』と思っていますよ。もちろん、自分もそうです。

だから、試合に出たときに『良いプレーをしないといけない』という危機感は常にあります。そういう意味で、今の代表はすごく競争力のあるチームだと思います」

そのような形で、ギラギラと向上心を燃やす選手たちが、フェアなライバル意識を持って戦っているのが現在の日本代表なのだ。

果たして、これは日本代表史上もっともたくましい状況にあるということなのだろうか。そんな質問をぶつけると、返ってきたのは、日本だけの小さな尺度でものごとを考えていない者らしい答えだった。

「いや、そういう選手たちが世界を舞台に戦っていける選手だと思うので。上を見れば(強豪国は)どこもそんな感じだと思いますよ」

結局のところ、鎌田のなかでは、変わったものと、変わらないものがある。

変わったのは、代表への想い。

変わらないのは、サッカー界での自分の立ち位置の測り方だ。

世界最高峰の舞台であるチャンピオンズリーグでの優勝。そんな目標を掲げる鎌田だからこそ、あくまでもサッカー界の頂点を基準に、自分やチームの置かれた位置を把握していく。

「はっきりと何が変わったのかというと……言いづらいですけど、代表に対する気持ちや、普段の戦いを代表につなげられたらいいなと思えるようになったのは、変わったところです。

ただ、自分が強くなるためには、やはり良いクラブでプレーし続けることがベストだと思う。自分が移籍するときのチーム選びだったり、そこでの目標についてはこれまでとはあまり変わらないんですよ」

「やんちゃ」な伝説であふれている10代のサガン鳥栖時代から、ベルギーでの1年間の武者修行を挟んだ末につかんだドイツ・フランクフルトでのEL制覇。「メンタルが複雑骨折」したと形容するほど苦しい時間を経て決まった新天地ラツィオでの挑戦。そして、これまではあまり語ってこなかった日本代表への想いの変化……。

決して変わらないものがあるからこそ、変わった部分は輝きを放つ。変わったものがあるからこそ、変わらないものの価値は一段と際立つ。

日本代表の一員として、世界の頂点を目指す鎌田大地は、そんな両面を持つフットボーラーなのだ。

日本対ドイツは10日3:45より試合開始予定。
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