21歳のセントラルMFにとってはジェットコースターに乗っているかのような日々だっただろう。1月31日の移籍期限最終日が迫るなか、チェルシーとアーセナルから巨額オファーが舞い込んだ。アーセナルに至ってはブライトン側が“非売品”であることを強調して丁重に断りを入れたが、2度目のオファーで総額7000万ポンド(約112億円)を提示した。
年明けの段階で残留を明言していたカイセドだったが、新たに加わった代理人たちの助言もあってか、思い切った行動に出る。自身のインスタグラムでクラブに対して感謝を述べつつも移籍嘆願の声明を掲載し、加えてサポーターにはステップアップへの理解を求めたのだ。そしてクラブは、週末に控えたFAカップ4回戦(リバプール戦)への影響などを考慮し、移籍期限最終日までカセイドのチーム練習参加を禁じるという異例の措置を取った。
結果、ブライトンは最後まで断固拒否の姿勢を貫き、諦めざるを得なくなったアーセナルはチェルシーからイタリア代表MFジョルジーニョを獲得。カイセドを巡る一大騒動は残留という形で幕を閉じた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/0b87e6a75fb4277cfd83a5c36eabf26480cd9b1d
モイセスは『前に進みたい』と言った。それはそうだろ。夢のような話であり、人生で二度と訪れる保証などない機会だ
そんななか、YouTubeチャンネル『Marca90』に代理人のひとりが登場し、そのインタビューの様子をアルゼンチン全国紙『Ole』が伝えた。騒動の舞台裏を明かした人物の名はマヌエル・シエラ氏。複数いる代理人チームの中心的存在で、彼はまず今回の大型移籍が成立しなかった事実を嘆いた。
「できれば夢を叶えてあげたかったんだがね……。魅力的なオファーは確かにあったんだ。テーブルの上に置かれた文書を見て、モイセスは『前に進みたい』と言った。それはそうだろ。夢のような話であり、人生で二度と訪れる保証などない機会だ。だから、あの(インスタ投稿された)声明文は僕たちが手助けして作った。プレミアリーグへ導いてくれたブライトンへの感謝と、今回の移籍への強い願いを込めてね」
さらにシエラ氏は、嘆願文書は事前にブライトンに掲載の許可をもらっていたと主張する。
「クラブはすべて承知の上だったよ。モイセスが直接問い合わせたのだから間違いない。許可を得ていたんだ。結果的に練習参加が禁止されてしまったけど、クラブは何も彼を除外しようと考えたわけじゃない。彼らは状況を理解して、モイセスに愛情を注いでくれたんだよ。すべては完全な合意の下で行なわれたのさ」
それでも、今冬にビッグディールが成立しなかった点については後悔の念が尽きない。
「先のことなんて誰にも分からない。とりわけフットボールに関してはね。もし練習でモイセスが大怪我でもしたら終わってしまうじゃないか。だからこそなんとか、実現させたかったのだけどね……」
少し出来すぎたストーリーのようにも聞こえるが、ブライトンが目ざすクラブ史上初となる欧州カップ戦切符の獲得は、中盤で異彩を放つカイセドの活躍なくしては成し遂げられない。