https://news.yahoo.co.jp/articles/4f81042bd5cd8ca27e8ff6f3a44253b588e91cf6
20試合を終え、途中出場を含めて16試合に出場しているアーセナル冨安健洋
ユニフォームが変われば、盟友はピッチの上で倒すべき相手となる。プレミアという舞台でぶつかりあう、そんな時間をふたりは楽しんでいるように見えた。
「試合後、(三笘)薫くんには『しんどいですわー』と言いましたね。試合中、薫くんと2対1という状況がけっこう多かったので。薫くんがサイドにいて、さらに僕とセンターバックの間に走ってくる選手もいた。とりあえずその選手を捕まえて、そこから薫くんへ行ってという風にやっていたから、これはしんどいですという話はしましたね。正直、プレミアに日本人選手が2人というのは、まだまだ物足りないと思います。僕はイタリア、ベルギー、イングランドの3カ国でしかやったことはありませんが、間違いなくプレミアが世界一のリーグだと言える。やってみないと、実際にそれは肌で感じることができない。ひとりでも多くの日本人がプレミアの舞台に来て、そして優勝を争えるようなトップ6でプレーすること。4位以内に入ってチャンピオンズリーグでプレーする選手がひとりでも多く出てこないといけないと思っています。今回のカタールワールドカップの日本代表のメンバーを見ても、海外組はかなり増えています。チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに出る選手や、4大、5大リーグでプレーする選手の割合は増えている。でも、それでも結局、ワールドカップでは16強の壁にまたしても阻まれた。その意味では、まだまだ足りないのかなと思います」
ワールドカップで日本サッカーが超えられなかった壁、そして自身のパフォーマンスに関しては、何度振り返っても消化不良だったとの思いが消えない。後悔の念も、少なからず残っている。
「満足の行くワールドカップではなかったです。大会前にアーセナルで怪我をしたけど、初戦のドイツ戦には間にあうくらいだったので、僕としては大丈夫だと思っていました。でもリハビリをしてもベストのコンディションで初戦を迎えることはできなかった。2戦目のコスタリカ戦も出られず、スペイン戦も途中からになって。難しかったですね」
失意の冨安は12月に日本に一時帰国した。日本代表はベスト16で敗退したものの、ドイツとスペインを破り、クロアチアをあと一歩のところまで追い詰めた戦いに、称賛の言葉を浴びることもあった。しかし冨安はそれを喜ぶことはできなかった。
束の間の日本滞在では香川真司と食事にでかけた。尊敬する先輩と、サッカーや人生について語りあい言葉を交わす中で、その思いはさらに強くなった。
「真司さんとはタイミングが合えば一緒にご飯に行かせてもらう関係で、尊敬している先輩のひとりです。もしかしたら一番尊敬している先輩かもしれないですね。この人の考え方についていこう、そう思える先輩です。ご飯を食べながら話して、その度に何かしら刺激になるもの、自分の中にすっと入ってくるものを与えてくれる存在です。もちろんカタールワールドカップについても話しました。ああいう負け方もしたし、選手が感じているものと周りからの反響や扱い方にはギャップがある。それは真司さんも言っていました。(吉田)麻也さんも言っていましたけど、選手には負けて帰ってきて悔しい気持ちがある。でも日本で応援してくれたサポーターたちはよくやったと讃えてくれる。ただ、僕たちはサッカー選手だし、結局ピッチ上で価値を示すのがサッカー選手の本質。ピッチ上で自分の価値をどれだけ示せるか、その本質は忘れずにやっていきたいと思います」
その時に、香川にもらったアドバイスがある。3年半後のワールドカップを今から頭に入れ計画的に日々を過ごしていくこと――。それまで冨安は、所属するクラブで全力を尽くすことが結果的に日本代表にも繋がると考えていた。しかしそれまでの思考を切り替え、頭の中に次のワールドカップをおくことにした。
「正直、カタール大会はワールドカップのために4年間準備して挑んだわけじゃなかった。アーセナルで、自分のチームで日々やっていることがワールドカップに繋がっていればいい。僕はいろんなところでそう言っていました。でも真司さんから、ちゃんとワールドカップに向けて4年間準備した方がいいという話をしてもらった。真司さんも2014年から2018年までの4年間をしっかり準備して挑んだという話を聞いて。なので次の大会には、ここから3年半しっかりと準備をしていこうと思っています」
3年半という時間をかけて進めていく準備。負傷を減らし、シーズンを通して万全のコンディションを維持するという思いは強い。初めてのワールドカップは負傷により満足の行くものとはならなかった。少しでも怪我を減らすため、新たに始めたこともあれば、逆に止めたルーティーンもある。その足元にも、新しい変化を加えた。
「スパイクはサッカー選手にとっていちばん大事なもので、選手の身体の一部でもある。その意味でもベストの選択をしなければいけない。アシックスは日本の企業ですし、しっかりとディスカッションしながら一緒に細かくスパイクを作っていける。実際に履いてみた感触もいいですね。もともと高校時代にも履いていましたし、フィット感にはいい印象がありました。このまま話し合いながら、いい方向に向かっていければと思います」