「ビックリしたけど、感動した」元福岡のスペイン人GKが回想する“日本で見た驚きの光景”。 最も印象に残ったJ戦士は?

ネタ・談話

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アビスパ福岡に入団してから2シーズンが経過した2021年1月、ジョン・アンデル・セランテスは、日本に残ることができないことを知った。チームはJ1昇格を果たしたが、「役員が交代し、外国人枠をGKで埋めないことを決めた」ことが原因だった。

傷心のセランテスを励ましたのがポジション争いのライバルだった杉山力裕だった。「夫婦で自宅まで来てくれて、僕と妻を気持ちよく送り出してくれた。忘れられない思い出だ」と、セランテスは振り返る。

一方、杉山はSNSを通して、「たくさんの優しさと愛情をもらった」とセランテスに感謝の気持ちを述べるとともに、その人柄をこう褒め称えている。

「真面目でひたむきだ。日本語の勉強にも熱心で、分からないことがあれば質問し、次の日には完璧に覚えている。GKとしては、何度もチームの窮地を救うセーブを見せた。彼がいなくなるのは寂しいよ」

https://news.yahoo.co.jp/articles/7cfe131b0a3bab5a640ee6eee1fd2cf297d69a7b

最初は文化やサッカーの違いに戸惑いながらも、日本に魅了されていった

スペインで豊富なキャリアを誇るセランテスはJリーグで67試合に出場。そのうち20試合でクリーンシートを達成した。Jリーグに確かな足跡を残したが、しかし日本での滞在を通してより大きな刻印を刻まれたのは彼のほうだった。それを証拠に今回のインタビューにおいても「日本に戻りたい」という言葉を繰り返し口にした。

セランテスはプリメーラ・ディビシオンRFEF(3部リーグ相当)に所属するログロニェスでプレーしている。レガネス時代には1部昇格も経験した彼は、より上のカテゴリーでもプレーできる実力を維持しているが、あくまで希望は日本に戻ることだと重ねて強調する。

「もちろん選手として戻ることが理想だ。でもそれが叶わなくても、旅行で訪れたい。まだまだ行きたい場所はたくさんあるからね」

セランテスは、すっかり日本文化に魅了された。当初は「スペインとは大きく異なる。スポーツとの向き合い方もね。僕は子供の頃からずっと負けず嫌いだった。だから日本人はサッカーを遊びのように捉えられているように感じて、イライラすることがあった」とカルチャーショックを感じることがあったという。

だが、「相手の考え方を受け入れることで僕も変わった。日本人はミスに対して寛容だ。発信するメッセージもとても前向きだ。ヨーロッパで生まれ育った僕のような人間にとっては新鮮なことだった」と異文化の理解に努めることで乗り越えた。

そして次第に試合に負けても、ミスを犯しても、すぐに気持ちを切り替え、リスタートを切る日本人のメンタリティがセランテスの心を捉えて離さなくなった。

サッカーの面では、Jリーグのプレーレベルの高さを認める一方で、課題も指摘する。

「技術的に優れた選手が多い。でももっと牙を剥くくらいの気概でプレーしてもいいと思う。スペイン人は子供の頃から競争環境に身を置く。でも日本人はスタンスが異なる。ボールコントロール、左右両足とも遜色のないキック精度、ターン、パス、ワンツー……。技術的にはヨーロッパのトップリーグに匹敵するレベルにあるからなおさらそう思う」

またGKに対象を絞ると、「足下の技術を高めることにこだわりすぎる部分がある。もっと総合的にバランスよくスキルを習得したほうがいいかもしれない」と助言する。

特に印象に残った選手としては、アビスパ時代のチームメイトで現在川崎フロンターレに所属するMFの遠野大弥の名前を挙げる。

「フロンターレからレンタルで加入した。ダイナミックかつ機動力がある。その前のシーズンは下のカテゴリーでプレーしていた選手なんだけど、一目見て、チーム一の実力の持ち主であることが分かったよ。典型的な日本人選手とは何か違うものを持っていた。プレーに熱があって、クレバーさもある」

日本代表はW杯で母国のスペイン代表と対戦する。セランテスは遠野のプレーを引き合いに出しつつ、一泡ふかすことも可能だと語る。

「ミナミノ(南野拓実)やイヌイ(乾貴士)のような選手にも言えることだけど、日本の選手はテクニックや敏捷性に優れる。止めるのは困難だ。トップレベルで勝負をするには、球際に強いディフェンダーや前線で基準点の役割を果たすフォワードが不足しているのは事実だ。スペインが有利なのは間違いないけど、油断は禁物だ」

日本の出方に注目が集まるが、セランテスはゲリラ戦を仕掛けてくると予想する。「ボールを握りながら、敵陣でのプレー機会を増やしていくスペインに対し、日本は前から圧力をかけることで対抗するんじゃないかな。見ていて楽しい試合になるはずだ」

セランテスはピッチ外でも妻のサンドラと日本での生活を満喫していた。「毎日がとても楽しかった。住環境はヨーロッパの一般的な街と大きな違いはなかったけど、日本文化の魅力というものは日々の暮らしの中でいたるところで感じることができた。家のすぐそばにショッピングセンターがあって、チームの練習場からも近かった。チームワークも良くて、スペインのチームと同じように、定期的にみんなで集まる食事会があった」

セランテスはスペイン随一の美食の地として有名なバスク地方の出身だが、日本料理についても絶賛する。「素晴らしいの一言だ。何でも美味しかった」

日本社会における対人関係は、我々ラテン系の人間には独特なものに映る。セランテスも適応が難しかったことを認めるが、日本人と深く関わったからこそ得た見解を語る。

「身体接触がないからね。僕は友達ともハグするのが大好きで、物足りなさを感じたことは事実だ。でもしばらくして、それは他人へのリスペクトの表れであることが分かった。ある日、4歳ぐらいの子供が1人で外を歩いている姿を見かけた。最初はビックリしたけど、道行く人が声をかけているところを見て感動した。スペインでは目にしない光景だからね。日本人だって愛されたいという気持ちは強い。でもその愛情表現が異なるだけなんだ」

ファン投票でMVPに選出されるなど活躍を見せたが、セランテスは本人の意思に反してアビスパを退団した。スペインに帰国して数週間後には、当時2部に所属していたテネリフェへの加入が決定。昨年夏に先述した通りログロニェスに移籍した。

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最後に、セランテスは「日本のチームから声がかかったら、明日にでも日本に行く」と約束すると、こう付け加えた。「日本に行くことが決まった時、僕と妻は泣きながらスペインを後にした。でも2年間の滞在を経て日本を離れる時はもっとたくさんの涙が出た」

コメント

  1. 名無し より:

    典型的な日本人選手とは何か違うものを持っていた。プレーに熱があって、クレバーさもある

    外国人からこういう本音が聞けるのは貴重な事

  2. 名無し より:

    退団してどこもとらないのは金銭的にもそれなりなんだろうな、とは思ったけどね。ヨーロッパからgk取るチームがちらほらいるのをみるとなおさら。

  3. 名無し より:

    いい記事だな

  4. 名無し より:

    札幌に単身赴任する前のリーマンの心情だな

  5. 名無し より:

    まあJ1からじゃ枠の問題も実際有るし(CLだとオーバーしてGKはアジア人でもなきゃ使い分け辛い)
    J2中心で給料交渉次第じゃなきゃ難しいだろう

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