ドイツ戦4-1快勝のウラで鎌田大地が口にした“余裕”「代表で点を取りたいけど、そこまで焦りはない」 | footcalcio

ドイツ戦4-1快勝のウラで鎌田大地が口にした“余裕”「代表で点を取りたいけど、そこまで焦りはない」

鎌田大地

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日本代表がドイツのヴォルフスブルクでドイツ代表を4-1で一蹴した。カタールワールドカップのグループリーグで対戦してから290日余り。敵地での再戦で世界のサッカーファンが目にしたものは、結果だけでなく、試合内容でもドイツを上回った日本サッカーの充実ぶりだった。

カタールW杯で対戦したときとは違う。あの時は序盤から主導権を握られる苦しい試合展開ながらも最後のところでしのぎきり、後半一瞬のスキを見逃さずに逆転劇へとつなげたが、今回は試合開始直後から明確なゲームプランでしっかりとドイツ相手にリードを奪うと、後半もゲームコントロールしながら相手の攻撃を抑えきり、終盤の2ゴールでとどめを刺すという見事な試合運びを見せた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/571c2be8283cb078ccdf4943dde8aaba6a0af54f

今日はよかったですけど、自分たちはもっとよくできると思う。これを続けていくことが大事

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そこには積み重ねてきた成熟がある。ピッチにいる選手全員がやるべきことがわかっているから、判断スピードが速い。それぞれの選手が持つ武器の活かし方をチームで共有できているから、選択はシンプルでも脅威となる。

一方、雪辱を期して臨んできたはずのドイツは、W杯後の戦績が日本戦まで5試合でわずかに1勝と不振の沼から抜け出せないでいた。特に守備が中途半端だったどころか、いつ、だれが、どこで、どこから、どのようにアプローチするのかというのがまるで整理されておらず、それぞれの守備が単発止まりなので、どうにもボールを奪いきれない。

ただドイツサイドにそんな荒さがあったとはいえ、日本は終始とても冷静に、そして賢くパスを回しながら相手のプレスを回避し、攻撃へとリズミカルに移行していた。そのかじ取りを支えている選手の一人が、鎌田大地だ。

試合後のミックスゾーンで、「ドイツのプレスに対してパスの出口をうまく作り出せていたのでは?」という質問に対して、確かな感触をつかんでいることをうかがわせる答えを返していた。

「今日は良かったんじゃないですかね、もっと点入ってもおかしくなかったと思う。ドイツが良くなかったとはいえ、ドイツのホームで。彼らは彼らで今日はすごい勝ちたかっただろうし、その相手にこういった試合ができるのはワールドカップの時とは違う意味のある勝利だと思うし、自分たちが成長してると実感できるような試合だったかなというふうに思います」

互いのタスクを理解しあっているから、選手間の距離の取り方もいい。日本が守備陣からパスを回しながら攻撃へのチャンスをうかがっているときに、それぞれの選手は自分の位置だけではなく、周りの味方選手の位置を確認しながらポジショニングを取っている。だから、パスを受けた選手が相手からプレスを受けても、慌てることなくパスで回避することができるし、相手がパスを警戒したらボールを収めてドリブルで運ぶこともできる。

そうしたポジショニングの取り方が鎌田はとても優れている。トップ下で起用されたからといって、その位置から動かないということはなく、状況に応じて、相手の出方に対して柔軟に対応する。ブンデスリーガのフランクフルト時代にはボランチ、トップ下、インサイドハーフ、オフェンシブなサイドと様々なポジションで起用され、そうやって培ったものをどんどん自分の中に蓄えて、プレーの幅をどんどん広げている印象を受ける。

日本代表の2点目は鎌田も絡んで生まれたものだ。冨安健洋から右サイドで相手マークを外していた伊東純也にパスが入ると、すかさず鎌田が回りこむような動きでパスを受ける。ボールは少しずれていたが素早く収めると、右サイドを駆け上がってきた菅原由勢に丁寧なパス。そこからのグラウンダーのクロスをペナルティーエリア内でフリーだった伊東がシュートに持ち込み、さらに上田綺世が方向を変えてゴールネットに流し込んだ。右サイドでスペースに流れ込んだり、相手守備の間に入り込んだりしてパスを引き出すのはフランクフルト時代にも良く見せていたプレーだ。

30分には左サイドからボールを運んできた三笘薫からの横パスをペナルティーエリア内で受け、走りこんできた守田英正へのパスを狙ったシーンもあった。ドイツ守備陣は4バック前のスペースが空きやすい。そうした相手の弱いところをうまく見つけて顔を出せているのも素晴らしいが、自分がタイミングよく顔を出しているところを味方に見てもらい、パスが出てきているというのは良好な関係性ができていることの表れだろう。

「きょうは今シーズンに入ってから一番身体が動いていた。個人的にはすごくいいフィーリングだったので、点も取れるかなと思ってたんですけど。これを続けていくのが大事かなと」

相手守備が守りにくいところにポジショニングを取り、パスが来ないとなったらまた次のアクションへ移っていく。自分のいるところを相手に意識させることで意図的に味方が使いやすいスペースを作る。自分を経由することで攻撃がスピードアップし、変化が生まれるビジョンを持ちながらプレーをする。

こうしたプレーが特徴の選手というと、それこそドイツ代表のトーマス・ミュラーの名前があげられる。W杯で対戦した時はミュラーの嫌らしい動きに日本の守備陣が手を焼いていたのを思い出すが、今回は鎌田の動きをドイツがまるで捕まえられずに翻弄されていたのが印象的だった。

今夏、イタリアセリエAの強豪ラツィオへと移籍をしたが、そこでも確かなものを身につけていることも明かしている。

「ラツィオのやり方でいろんな引き出しも増えている。どういうところに動けばいいとかそういう部分で学びはあるので、生かしていけたらいいなと思います」

ポジション柄、そしてこれまで積み重ねてきた数字からも、ゴールへの関与というのは気になるところだし、期待されるところではある。この試合でも三笘からのパスを受けて、ドリブルから強烈なシュートに持ち込むシーンもあった。「ゴールは決まる時は決まるし、決まらないときはなかなか決まらない」と以前口にしていたことがあるが、ドイツ戦後にも落ち着いた様子で試合を振り返っている。

「今日も自分自身ゴールできるようなシーンもありましたし。そういうのを何回も続けることが大事だと思うので。ちゃんといるべきところにいるっていうのが大事だと思う。代表でも点取りたいなと思いますけど、でもそこまで焦りのようなものはない」

「いいシーンは何回かあったと思う。意識してそういうのは取り組んでいる。代表では点ももちろん欲しいなと思いますけどチームとしての出来と勝利を重視していて。クラブでは逆にそういう部分もすごく意識していかないとな、という感じですね」

焦ることなく取り組めているのは、自分たちの成長を直に感じているからでもあるのだろう。W杯での結果を受けて、どのような思いでこの試合に臨んだのか。

「ワールドカップよりも間違いなく自分たちはできる自信はあったし、どれだけできるかっていうのは自分たちも楽しみだったと思う。それを表現はできたと思うんで。ただ、やっぱり今日はよかったですけど、自分たちはもっとよくできると思う。これを続けていくことが大事なので」

ミュラーは「相手は世界のトップ15、トップ10に入ってくる国。自分たちはいまそこにはいない」と日本を称えていたが、鎌田の言葉通り、ここで自分たちの足元を見失わずに、さらに貪欲に成長への取り組みを続けていくことが次の扉を開く力となるはずだ。

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次は10月のインターナショナルマッチウィークで活動が予定されており、同13日に『デンカビッグスワンスタジアム』でカナダ代表と、同17日に『ノエビアスタジアム神戸』でチュニジア代表と対戦する。
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