なぜブライトンは三笘薫と5年総額約38億円の大型契約を結んだのか…背景に潜むビッグクラブ移籍に備えたしたたかな戦略とは?

三笘薫

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英プレミアリーグのブライトンは20日、日本代表MF三笘薫(26)との契約を2027年6月末まで延長したと発表した。

地元メディアによれば、2万ポンド(約364万円)の週給がチーム内でトップクラスの8万ポンド(約1458万円)に激増。年俸換算で416万ポンド(約7億5730万円)に、1年間の延長オプションを含めた5年間の総額では2080万ポンド(約37億8660万円)に達する大型契約には、ブライトン側の期待だけでなく、高騰する違約金を巡る戦略も反映されている。

今月に入って複数の英メディアでブライトンとの契約延長が報じられてきた三笘が、笑顔を浮かべながら真新しい契約書に正式にサインした。

ブライトンの正式発表に合わせて、クラブの公式X(旧ツイッター)は日本時間20日夕方から三笘関連のポストを連投。そのなかには三笘がサインしている部屋へ、ロベルト・デ・ゼルビ監督(44)が大喜びしながら入ってくる動画も含まれている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/159a87d0ae9d3578a297cd6d9c1893789e7a617b

ロベルト・デ・ゼルビ監督も大喜び

昨シーズン途中の就任以来、それまではリザーブだった三笘を主軸として重用。プレミアリーグ屈指のウインガーへ変貌を遂げるサクセスストーリーを後押ししてきたイタリア出身の指揮官は「何年だ? 5年か? 6年か?」と矢継ぎ早に質問。三笘が「4年です」と答えると、満足そうに「アミーゴ、私は幸せ者だ」と返している。

さらに別のポストには、こんな英文が添えられた。「King Kaoru is here to stay(キング薫はここに留まる)」

三笘は2021年夏に川崎フロンターレから4年契約でブライトンへ加入。ベルギーのユニオン・サンジロワーズへ期限付き移籍した2021-22シーズンを経て昨シーズンに復帰し、ここまで公式戦で13ゴール12アシストをマークしている。8月のウルヴァーハンプトン戦で決めた今シーズン初ゴールは、同月のプレミアリーグ最優秀ゴール賞に選ばれた。

同時に大ブレークを遂げた昨シーズンの後半から、三笘にビッグクラブが関心を寄せていると何度も報じられてきた。今シーズンも引き続き熱い視線を注がれる状況下で、ブライトン側も2025年6月末で満了を迎える契約の延長に動いてきた。

地元メディアの『London World』によれば、新たに結び直した4年契約は「10月上旬に基本合意に達していた」という。同時に条件面も見直され、例えばこれまで2万ポンド(約364万円)だった週給に関して、同メディアは「8万ポンド(約1458万円)になる」と報じている。ブライトンではトップクラスとなる金額だ。

さらに新たな契約のなかには、1年間の延長オプションも付帯されているという。年俸に換算して416万ポンド(約7億5730万円)となる報酬は、オプションを含めた5年間の総額で実に2080万ポンド(約37億8660万円)に達し、これまでヨーロッパに活躍の場を求めた日本人選手のなかでも最高クラスの長期大型契約となった。

契約延長は三笘の市場価値をも高める。

具体的には契約途中で他のクラブへ移籍する際の違約金も、今年3月の段階で報じられた3500万ポンド(約63億7175万円)を、さらに上回る金額で設定されるのは必至となった。抑止力になるからこそクラブの公式Xは「ここに留まる」とポストし、前出の『London World』も「三笘はプレミアリーグのブライトンに将来を託した」と報じた。

三笘自身もイギリス南東部に位置する、同国有数のリゾート地ブライトンを「気候もよく、海も近い。居住する上で本当に素晴らしい」と心から気に入っている。さらに、クラブを強力に後押しするスタンドの雰囲気についても地元メディアにこう語っている。

「サポーターはホームでもアウェイでも、常に大きな声で僕たちを応援してくれる。本当に温かみを感じる、特別なサポーターです」

オプションを含めた5年契約をまっとうすれば、三笘は31歳になっている。報道通りに「将来を託した」形に近づいていくが、一方で高額な違約金を全額支払ってでも三笘を獲得したい、というビッグクラブが現れれば状況は大きく変わってくる。

ブライトンからは今夏、アルゼンチン代表MFアレクシス・マクアリスター(24)がリバプールへ、エクアドル代表MFモイセス・カイセド(21)がチェルシーへ移籍した。しかも、主力だった2人はともに昨シーズン中にブライトンとの契約を延長している。

マクアリスターは昨年10月に、契約を2025年6月末まで延長。アルゼンチン代表として臨んだカタールW杯制覇を介して市場価値がはね上がったなかで、6000万ポンド(約109億3700万円)の違約金で中盤の強化を図るリバプールへ移籍した。

カイセドの契約延長が発表されたのは今年3月だった。2027年6月末までの長期契約を結んだわずか3カ月後に、プレミアリーグ史上で最高額となる、1億1500万ポンド(約209億6245万円)もの違約金を提示したチェルシーに8年契約で加入した。

2017-18シーズンからプレミアリーグで戦うブライトンが展開してきた、独自の選手発掘及び育成戦略を地元メディアの『Sussex World』はこう評価する。

「世界中から無名の若手選手を発掘し、育ててきた積み重ねがいま、当然の評価を得ている。すべてがプレミアリーグにおける地位を確立するために貢献している」

ブライトンでのプレーで市場価値を高めたマクアリスターやカイセドが残した違約金は、次の世代を発掘および育成するための原資となる。ブライトンのなかで受け継がれていくサイクルのなかに、川崎から加入した際の違約金250万ポンド(約4億5600万円)を自らの力で、現在進行形で高騰させている三笘も加わる可能性は十分にある。

いずれにしても、ブライトンとの契約を延長したいま、全幅の信頼を置くデ・ゼルビ監督のもと、三笘にとっていままで以上にサッカーへ集中できる環境が整った。招集されていた日本代表の10月シリーズを体調不良で辞退した決断も、UEFAヨーロッパリーグと並行して戦ってきた今シーズンの過密日程で疲弊した心身を再び充電させたはずだ。

複数の英メディアは、依然として三笘の動向を注視しているビッグクラブとしてリバプール、マンチェスター・ユナイテッド、ラ・リーガ1部のバルセロナなどをあげる。21日から再開されるプレミアリーグで、ブライトンは同じく三笘に大きな関心を寄せる昨シーズンの三冠王者、マンチェスター・シティのホーム、エティハド・スタジアムに乗り込む。

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