浦和レッズDFホイブラーテンはなぜJリーグへ? 元同僚の「日本自慢」で興味を持った

Jリーグ
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Why JAPAN? 私が日本でプレーする理由

浦和レッズ マリウス・ホイブラーテン インタビュー 前編

Jリーグは現在、じつに多くの国から、さまざまな外国籍選手がやってきてプレーするようになった。彼らはなぜ日本でのプレーを選んだのか。日本でのサッカーや、生活をどう感じているのか? 今回は浦和レッズのDFマリウス・ホイブラーテンをインタビュー。それまでずっと母国ノルウェーでプレーしていながら、Jリーグに来た理由、心境を語ってもらった。

https://news.yahoo.co.jp/articles/9837e6393b20f6d7f9ff93e2215f513ff156e024

浦和レッズのマリウス・ホイブラーテンは2023年からJリーグでプレーする


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飛行機の窓から初めて東京の街を見た時、その大きさに圧倒されそうになった。

浦和レッズに所属するマリウス・ホイブラーテンは、昨年1月に人生で初めて日本に降り立った。人口550万人ほどの母国ノルウェーから、約1億2000万人が暮らす国で新たな挑戦を始めるために。

「空から見たあの光景は、はっきりと覚えている。東京は巨大な街だね」

まっすぐな視線をこちらに向けながら、ホイブラーテンはそう話す。激しく照りつける8月の太陽の下でトレーニングを終えてきたばかりだったが、その笑顔はどこか涼しげだ。

現在29歳のセンターバックは、それまでのキャリアをすべてノルウェーで築いてきた。だから初来日の際、不安や緊張がまったくなかったわけではない。「ノルウェーのような小さな国からやってきた」と強調する彼の話を聞いていると、初めて田舎から上京した時の自分や誰かにも重なる気がする。

「ヨーロッパとは異なる環境や文化に適応しなければならないと思っていた。とくに日本では、仕事に対する姿勢や他者を敬う点が異なると聞いていたので、どんなものかと想像していたんだ。でも実際に日本に来てみて最初から感じたのは、すべてがポジティブだということ。自分の決断が正しかったと、初日から実感したよ」

今からおよそ2年前、27歳だった頃のホイブラーテンには他国のクラブから移籍のオファーがあった――いくつかのアメリカのクラブと日本の浦和から。その前季となる2021年シーズン(ノルウェー1部リーグ「エリテセリエン」はJリーグと同じ春秋制)まで国内リーグを連覇していた彼なら、西欧のクラブにステップアップすることもできたかもしれない。

「確かにそれまでに多くのチームメイトが、ドイツやフランス、オランダ、ベルギーなどに移っていった。でも当時の自分の年齢を考えると、それらとは異なるチャレンジに踏み出してもいいと思えたんだ。僕はこの仕事を始めた時から、自分がスパイクを脱ぐ時に、絶対に後悔したくないと考えてきた。一度も訪れたことはないけど、興味を持っていた日本へ行くチャンスがあるのなら、挑戦しないわけにはいかなかった」

彼の前所属先ボーデ/グリムトで共にプレーし、ひと足先に日本へ移っていたキャスパー・ユンカー(現名古屋グランパス)から、この国のことは聞いていた。人々は敬意を持って親切に接してくれ、Jリーグのレベルは高い。元同僚はとても前向きに、自分がいま住んでいる国について、「自慢するように語っていた」という。

それに優れた日本人選手となら、欧州カップ戦で相まみえていた。2022年2月、UEFAヨーロッパカンファレンスリーグのプレーオフでボーデ/グリムトはセルティックと対戦。ホイブラーテンは2試合とも最終ラインの中央で先発し、連勝と勝ち抜けに貢献したが、敵地グラスゴーでの第1戦でゴールを決められた前田大然のことは、強く印象に残ったという。とくにスピードとスプリント、そして休むことなく走り続けられるスタミナに「感銘を受けた」。またその試合には、旗手怜央も途中から出場していた。

さらに2022-23シーズンのヨーロッパリーグ(EL)グループステージでは、アーセナルとA組に同居した。敵地ロンドンでの初戦では冨安健洋が先発してホイブラーテンが終盤に投入され、ホームでのリターンマッチではその逆となり、同じディフェンダーということもあって直接のマッチアップはほぼなかったが、日本のトップレベルの守備者とも同じピッチに立った経験がある。

フットボーラーとしてだけでなく、人間としても成長したい──。そう考えていたホイブラーテンは、20代後半でなおも欧州の高みを目指していくのではなく、自らの人生と人間性に奥行きと幅をもたらしうる選択をした。住み慣れた出生国を離れ、街並みも気候も文化も違う、極東の島国へやってきたのだった。

別のオプションとしてあったアメリカよりも、変化の度合いは大きい。それだけに期待と同じくらい、不安もあった。

「でも初日から、ここが本当にすばらしい国だとわかったよ」とホイブラーテンは続ける。

「キャスパーが言っていたように、人々にもクラブにも歓待してもらった。空港や駅、お店のなかで言葉が理解できずに困っていたら、英語を話さないのに身振り手振りで親切に助けてくれる人がいたし、当時のレッズには、デンマーク人のアレクサンダー・ショルツやスウェーデン人のダヴィド・モーベルグがいた。似た言葉を話すスカンジナビアのチームメイトがいてくれて、助かったよ。浦和の街にもチームにも、すぐに順応できたと思う」

日本で生活を始めると、ほどなくしてノルウェーとの共通点にも気づいていった。

「もちろん違いはたくさんあるけど、これは一緒だなと思えたことがひとつあって。日本人もノルウェー人も、物事をきちんと進めていく。その感覚はかなり近いものがあると感じる。日本と比べると、ノルウェーのほうが騒々しいかもしれないけど、どんな物事にもちゃんと取り組み、できるかぎりスムーズに進めようとしていくところは共通していると思う」

そんな風に新天地に造作なく馴染み、チームには遅れて合流したものの、プレシーズンは順調に過ぎていった。ところが実際に開幕したJ1リーグでは、好スタートを切るどころか、いきなり躓いてしまい、タフな現実を思い知ることになるのだった。
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中編「ホイブラーテンが語るJリーグのレベルとプレーの心得」へつづく

コメント

  1. 匿名 より:

    秋春制になったらこういうケースが増えるんだろうな

    ブラジル人選手が減るのは寂しいが、北欧、東欧、アフリカ人選手が増えるのは面白そう

    • 匿名 より:

      記事にノルウェーは日本と同じ春秋制って書いてるのになんで北欧選手が増えると思った?

  2. 匿名 より:

    ↑え?

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