
そんな時に、試合の流れを一変させるプレーができる「切り札」と呼ばれる選手たちがいると、指揮官はカードを切るための決断がしやすい。
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20節キール戦、途中出場の伊藤達哉がゴール演出 監督「タツによるところが大きい」

ペナルティーエリア内で味方からパスを受けると、必死に守ろうとするキール選手4~5人を鋭いシュートフェイントからのステップで翻弄して、シュートに持ち込む。GKが辛うじて弾いたものの、ゴール前に詰めていた味方選手が押し込み、スタジアムのファンを歓喜させた。
試合後、ティッツ監督に話を聞いたら、こちらが驚くほど熱っぽく伊藤について語ってくれた。
「タツは今日、本当に素晴らしかった。だがそれも彼の持つクオリティーがあってのことだ。彼のことはもうずっと昔からよく知っている。ハンブルク時代からだ。タツは私にとっていつでもレギュラー選手の1人なんだ。今は途中出場からの仕事がメインになっているが、タツが違いを生み出すことができることを我々はよく知っている。途中から出場したら連続でダッシュをして、1対1でドリブル勝負を仕掛けることができる。今日最後に1-1の引き分けに持ち込むことができたのは、タツによるところが大きい」
今季、ここまで伊藤のスタメン出場はまだ1度だけ。だが存在感は大きい。終盤相手の足も止まりつつある時に繰り出される伊藤の切れ味鋭いドリブルと裏への飛び出しは、間違いなくチームのゲームプランの中に深く書き込まれているのだから。
ティッツ監督に、伊藤起用のタイミングについても尋ねてみた。
「正直言えば、今日だってもっと早い段階で投入したかったんだ。ただ、監督として試合の流れを見ることも必要になる。今日で言えば、スタメンでプレーしていた選手が左サイドでかなりいいプレーをしてくれていたんだ。ただ終盤さらにサイドから1対1で仕掛けられる選手を投入して、相手を押し込もうと思ってタツを投入したという流れだった」
伊藤本人はどうなのだろう。途中出場が通例化していることを、自分の中で消化できているのだろうか。
「監督とも話していますし、とりあえずはそうですね。それで完全にハッピーじゃないですけど、途中から出てできることがあるし、なのでそこは別にそこまで気にはしていないです」
伊藤は昨季5得点5アシストをマークしているが、リーグ戦33試合出場中26試合が途中出場と考えれば、この数字は高く評価されるべきものだろう。今季はさらに数字以外のところでプレーのクオリティーが上ってきていると感じているようだ。
「去年は途中からの出場が多かったなかで数字が結構出てたんですけど、そこまでボールを持った時に相手にとっての脅威になれてなかったと思うんです。今年はそういう意味では、相手がもう警戒してくれてる。試合の流れを変えたりとか、常に相手にとっての脅威になることができていると感じています。去年よりは自分としては数字は出てないですけど成長できていると思っています。なのであとは数字出さないといけないですね」
キール戦の得点につながったプレーはキッカー誌によるとアシストに記録されていた。
「あれ、アシストになるのかな」
ミックスゾーンで話を聞いている時にそんなことをつぶやいていた。選手はみんなどこかでやっぱり気にするものなのだ。チームの結果につながり、なおかつ数字として残るプレー。
「切り札」は確かな仕事をやってのけた。
