
11月29日、グループリーグ第3戦のスペイン戦に向けた練習中だった。このままではうまく戦えないかもしれないと感じた選手たちは、監督の森保らと話し合った。4月の欧州リーグ(EL)で、MF鎌田のフランクフルトがスペイン代表の主力を多く擁するバルセロナを破った「5―4―1」の守備陣形を取り入れ、歴史的勝利を手にした。
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感覚が変化した選手の「欧州流」に合わせ

自らのことを「カリスマタイプではなく、マネジメントタイプ」と言う。選手と丁寧にコミュニケーションをとり、士気を下げるような選手は主力であっても外し、目的を共有することで一体感を作り上げる。毎年のように日本代表クラスが抜けたJ1広島で3度の優勝を果たせたのは、こうしてまとめ上げたチーム力のたまものだった。
日本代表内にも火種はあった。欧州で日々最先端の戦術に触れる選手たちは、Jクラブの指導経験しかない監督やコーチ陣に、物足りなさを感じていた。最終予選の序盤でつまずいてからは、選手からコーチ陣に「勝つための方法」を求める声が一段と大きくなった。
9月にドイツで行われた代表活動で、森保のところに主将のDF吉田(シャルケ)、MF遠藤(シュツットガルト)、MF柴崎(レガネス)らベテラン、中堅の5人が「戦い方を話し合いたい」と訪れた。ゲームへの入り方、スコアや戦況に応じた試合の進め方など、一つ一つ話し合った。
森保は「こんなに細部まで決めていいのか」と驚きを感じつつ、答えを出していった。選手を戦術で縛りつけるのは好まなかったが、大事なのは選手に力を100%発揮させること。「選手は欧州で感覚が変化している。我々が対応しないといけない」と「欧州流」に合わせていった。
11月中旬以降に欧州組が合流すると、W杯初戦へ向けてチームの一体感は日に日に増していった。準備が最終段階になり、森保が強調したのは「和」。カナダとの最後の強化試合では、MF相馬(名古屋)ら「控え組」を多く起用し、26人全員で戦う姿勢を鮮明にした。主力から控えに甘んじていたMF南野(モナコ)でさえ、「出場するしないは関係ない。勝つことが全て」と、我を抑えてチーム第一主義を貫いた。
4度目のW杯を終えたDF長友(F東京)は、「最高の素晴らしいチームだった」と晴れやかに胸を張った。ドイツ、スペインという優勝経験のある大国を破り、堂々の16強。8強入りの壁は破れなかったが、「和」で「個」を補い、日本は快挙を成し遂げた。
